―それこそ、忌野清志郎さんなんかはロックが伝えるメッセージを生涯貫いていたと思います。
石橋:清志郎さんとは(RCサクセションとARBで)80年代にイベントでよく一緒になりましたけど、じつは深くは話せていないんですよ。チャボさん(仲井戸CHABO麗市)とはここ7~8年ぐらいで共演させていただいているんですけど。チャボさんにその頃の話をすると、「いやあ、俺たち(RC)は引きこもりだったからね」って言うんですよ(笑)。
―あまり積極的に他のミュージシャンと交流する方々じゃなかったみたいですね(笑)。
石橋:そうなんですよ。そういえば当時、大阪のイベントで一緒になったときに、清志郎さんが遠くの方で僕らの「BAD NEWS(黒い予感)」という曲を歌っていたことがあるんですよ。〈あちこちでクーデターが起こり出す〉っていう部分を歌っていたんですけど、そのときは何も話さずに終わったんです。それを後年チャボさんに話したら、「凌、それは清志郎一流の愛情の示し方だよ」って言ってくれて。その当時はライバル視もあったでしょうし、RCだけじゃなくて他のバンドもみんな距離があったんですよね。でも自分としてはもちろんRCには一目置いてました。清志郎さんの曲には、本当のラブソングもあるし、原発の歌もありますけど、そこには清志郎さんの戦いもあったと思うんですよね。
―それにしても、「ロックという言葉を使うのは一切やめた」というのはちょっとショックを受けました。
石橋:そうですか? でもやっぱり、あれだけの時間をかけて本質だと思ってやってきたことが、暖簾に腕押しみたいな感じで受け入れられなかったという気持ちがあるんです。
―「ヴィンテージ・ラブ」では、デジタル時代の音楽や映画へのアンチテーゼを歌にしていますね。ただ、実際にこのアルバムもサブスクリプションで聴けますし、それで石橋凌の音楽を知った、という人もいると思うんです。時代の変化による音楽の聴かれ方についてはどのように感じていますか?
石橋:配信も含めて利便性は高まったと思いますけど、アナログとデジタルを比べると、音像として低域がちゃんとあって圧倒的にアナログの方が良いわけです。PCやスマホで音楽を聴くと、中域しかない音でものすごく違和感があるんですよ。果たしてこれを音楽と言えるのかなって。同じことが映画でも起こっていて、デジタルより絶対35mmのフィルムの方が画が良いんですよ。色の深み、あたたかさはフィルムの方が圧倒的に豊かなんです。歌詞にも書いてますけど、進化しているようでじつは退化しているんじゃないかなって、ずっと思っていたんですよね。