森敬太、tofubeats、澤部渡らがおくるトーベヤンソン・ニューヨーク・アワード2022上半期 中間発表

・「駅 犬 猫 鳩」


澤部:この間、福岡ですごいタクシー運転手に当たりましたよ。めちゃくちゃ喋りかけてくる人で。乗ったら、自分の経歴の話をしだしたんです。「やっぱハタチの若造が2億とか持ったらダメですね」とか言って(笑)。おいちょっと待てよと。

一同:(笑)。

澤部:まあ話聞きたくなるじゃないですか(笑)。そうしたら、最初はホテルの仕事をしてたんだと。そしたらもうあれよあれよと上司に気に入られて、19の時にはもう取締役になっちゃったんだそうです。

tofu:嘘でしょ(笑)。

澤部:給料1億とかもらうようになっちゃって。

森:あまりに嘘が雑(笑)。

澤部:で、2〜3年働いて辞めて、タクシーの仕事を始めてるんですよ。で、考えてみたら実は発車した時、一番最初にカマしがあったんですよね。車線変える時に「あー難しいな……」みたいなこと言うんですよ。

一同:(笑)。

澤部:どうしたのか聞いたら、「俺普段レクサスなんすけど、先輩が貸せっつうから貸したんですよ」って(笑)。最初から始まってたんだ!って気づいたんですよ。もう口から出てくる話が全部嘘くさい(笑)。おもしろくなっちゃって、結構ちゃんと聞いてたんです。家から高校が遠くて電車通学してたらしくて……。

森:すごいしっかり覚えてんじゃん(笑)。

澤部:駅に行ったんだけど、電車が全然来ないと。で、ベンチに座ってたら、そのまま寝ちゃったんですって。気がついたら携帯のカメラのシャッター音がバシバシ聞こえて、何かと思ったら、犬と猫と鳩が自分の周りに沢山集まってて、めちゃくちゃ写真撮られてたって(笑)。

一同:(爆笑)。

もち:仏陀!(笑)。

澤部:仏陀だよ、本当に(笑)。あれは結構気持ちよかったですね〜。

森:いい乗車体験だよね(笑)。

澤部:ただ、ちょっと怖かったのが「Twitter探せばその時の画像あると思うんですよね」って言ってたんですよ。万が一画像見つかったら、その運転手の話全部本当なんじゃないかと思って、一応「駅 犬 猫 鳩」で検索したんですけど出てこなかったですね。

一同:(笑)。

tofu:乗せてる人も一期一会って思ってるからこそなんでも言いやすいってもありますよね。

森:昔、サヌキくんと福富くんの漫画の出版記念イベントで司会をする時に、事務所から会場までタクシー乗ったんだけど、しばらく走ったら、運転手がすごいハードル上げる語り口で話かけてきたんだよ。

金子:わりと最近ですね。

森:「私もこの商売長いんで、いろんなお客さん乗せてますから大体のことは知ってるんですよ」って(笑)。「何振られても面白い話持ってますんで、ちょっと何か一つ言ってみてください」って。

澤部:すげぇ!

森:だから、「僕、今からの漫画の話をしないといけないんで、漫画とかどうですか」って言ったら、急に黙り込んじゃって。信号を2つぐらい走って、「ゴルゴ13ならたまに読みますね……」って。

一同:(爆笑)。

森:すごくないその人? とんでもないハードルの上げ方して、これ以上ないくらい薄い返し(笑)。それが悔しかったのか、ノートを渡してきて、この中からテーマを選んでくださいって。

澤部:デンモクだ!

森:もうそれがクラクラするような内容が小さい字でいっぱい書いてあってさ。がんの治し方とか、こうすれば痴呆にならないとか(笑)。

大臣:そっち方面の人だったのかー!(笑)。

金子:思わぬところから忍び寄ってきますね(笑)。

・今からみんなで


澤部:1個思い出した。この間、茨城でライブやったんです。高速道路で向かってて、角張社長が運転してて僕は助手席に乗ってたんですけど、浦和あたりの分離帯の端に……。いやほんと、一瞬見えただけなんですけど……。

金子:もったいぶらずに教えてくださいよ!

澤部:ごきげんようのサイコロが落ちてて……。

一同:(爆笑)。

森:うそつけー! そんなおもしろいことあるわけないじゃん!(笑)。

澤部:本当なんだって! びっくりしたんだよ!(笑)。色もあの色なんだよ! でも証拠がないんだよ〜!

一同:(笑)。

森:まあ、どんだけ疲れててもそんな幻覚は見ないもんね(笑)。人間の脳には限界があるからさ。

澤部:やっぱそうですよね! 本当びっくりしたんですよ。

森:鮮やかな現代怪談だねぇ。

大臣:怖い話なんですか?(笑)。

一同:(笑)。

森:社長に「いま、ごきげんようのサイコロ落ちてませんでした?」って言ったの? 遂に発狂したって思われるよ(笑)。

澤部:そういう感じじゃなくて、「あの……いま落ちてたのって多分……」みたいな(笑)。

一同:(笑)。

澤部:「ちょっと待ってくれ」と。「こんなこといっても信じてもらえないと思うけど、ごきげんようのサイコロが落ちてたんだ!」って(笑)。

森:社長なんて言ってた?

澤部:「……え?」って感じで、驚きすぎて。後ろで佐久間さん(スカートのサポートドラマー)が「小堺一機がそこで死んだのかな~」って(笑)。

一同:(爆笑)。

森:小堺が死ぬと、サイコロをドロップするってこと?(笑)。

澤部:だんだん近づいて、姿が見えたと思ったら過ぎ去っていくスピード感が格別でしたね。高速になんか落ちてるって段階でもう異常ですから。その違和感がだんだんごきげんようのサイコロとして立ち上がってくるのが完全に未体験の状況で。

一同:(笑)。

澤部:いやほんと、いまからみんなで確かめに行きたいくらいだよ(笑)。

森:俺も体験したいよ。できれば予備知識ゼロの状態で。

もち:頭の中からごきげんようのサイコロを消して。

金子:「あれ…ごきげんようのサイコロじゃなかった?」(笑)。

森:「みんな見た!?」って(笑)。やりたいなぁ~。

大臣:何の話が上向いてたんですかね。

澤部:それが見れなかったんですよ!

森:「私は◯◯の達人」とかだよね(笑)。

もち:「略して、まるたつ〜」。 

澤部・大臣:「パート2~」。

一同:(爆笑)。

生来の小心ゆえ、来る仕事を全て引き受けていたら日次ダブルクリック数は遂に限界を越え、27inchモニターの前で仕上がったのはセミドライの即身仏だった。ようやく生活に水気を取り戻し、座談会の締め文を書くという優先度D+の作業に着手できたのは収録の二ヶ月半後。気持ちいいくらい何を話したか全く思い出せない。Instagramを開き、rootsyfishingの様子を伺うと、画面に12人の唐木さんと14匹の巨大魚、1匹のイカが同時に写し出され、気が動転してスマホと机の上のゲラを床に叩き落としてしまった。脳裏にうろおぼえの詩が浮かび、形を変えていく。肉叢に露満ちて、紙束は宙を舞い、デザイナー床に這い、コメ白く知ろしめす。すべて世は事も無し。トーベヤンソン・ニューヨーク・アワード2022に乞うご期待。 (森)

森敬太
京都府生まれ、デザイナー/アートディレクター。書籍、CDなどの装丁を多数手がけながら、2011年から自主制作漫画レーベル「ジオラマブックス」を主宰、漫画誌「ユースカ」を発行。2017年、合同会社飛ぶ教室を設立する。Instagram : @m_o0_ri

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