『ザ・ビートルズ:Get Back』が永遠に語り継ぐべき名作となった24の理由

9.
ビリー・プレストンはまさにバンドのカンフル剤だ。彼が登場するたびに、場の空気は一変する。彼がエレクトリックピアノを弾いた途端、「Don’t Let Me Down」に新たな命が吹き込まれ、ジョンは思わず「テンション上がるぜ!」と声を上げる。ジョンとビリーがマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「私には夢がある(I have a dream)」という有名なスピーチを「I Want You (She’s So Heavy)」と組み合わせるシーンは、本作最大の見どころの1つだ。


10.
筆者の個人的なお気に入りシーンは、わずか数秒間で終わってしまう。ランチにマッシュポテトを注文したリンゴは他のメンバーから冷やかされるのだが、カメラに向かって一瞬悲しそうな表情を見せた直後に、彼は快晴の朝を迎えた時のような爽やかな笑みを浮かべる。人生を終えるまでの間に、筆者はあの笑顔を度々思い出すだろう。

11.
自身がビートルズの大ファンであるポールは、ファンの視点ならではのフィクションを創作している。「Two of Us」をプレイしながら、彼はこれらの楽曲からコンセプトアルバムを完成させるという構想について語る。「『Get Back』の後に持ってくれば、“家路につく僕ら”っていう流れが生まれる。まさに物語さ! 『Don’t Let Me Down』の“ダーリン、僕は君を失望させたりしない”っていうのも使える」。ポールの主張に、「僕らを恋人同士に見立てる感じだな」とジョンが返すと、ポールは意を得たりと言わんばかりに「その通りさ」と答える。このやり取りを交わしながら、ジョンとポールはほぼ同時に顔にかかった髪を神経質そうに払いのける。まるで恋人同士のようなこのやり取りを、ジョージとリンゴが気まずそうに見て見ぬ振りをしているのが微笑ましい。筆者はこの世を去るまでの間にこのシーンを度々、いやかなり頻繁に思い出すに違いない。

12.
バンドのツアーマネージャーであり、至る場面でメンバーたちをサポートするマル・エヴァンスは愛すべき存在だ。本作を観れば、ビートルズの4人が彼をどれだけ信頼し、そして必要としていたかがよく分かる。ギターを手渡すだけでなく、彼は体を張って警察からメンバーを守ろうとする。彼のシーンのハイライトは、「マル、ハンマーを持ってきてくれ。あと金床も」というポールの呼びかけに戸惑いの表情を浮かべる場面だろう(余談だが、本作を観ればメンバーたちが「Maxwell’s Silver Hammer」を気に入っていたことは明らかだ。少なくとも初めてプレイした時点では)。


Translated by Masaaki Yoshida

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