泉谷しげるデビュー50周年、エレックからフォーライフへの変遷を本人と振り返る

野良犬 / 泉谷しげる

田家:1976年4月発売6枚目のアルバム『家族』から「野良犬」。これは良い曲ですね。

泉谷:これはサウス・トゥ・サウスの影響もありましたね。

田家:ピアノ、中西康晴さん。バックはサウス・トゥ・サウスですもんね。

泉谷:ギターは有山じゅんじ。つまり、サウス・トゥ・サウスのユニットの中にアコースティックのパターンがある。ライブもソウルバンドでバーっと始まって、途中でアコースティックになる、「俺の借金全部でなんぼや」とか、素晴らしいんですよ。あの影響でこういった曲を作れないだろうかって、カントリーから得たテクニックも混ぜて、アコースティックで。あと、歌だけが上手くなればみたいなつもりで。これはこれで精度を上げたかったんです。

田家:「野良犬」というテーマ、モチーフはこれを歌いたかったというのがはっきりあった歌に聴こえますもんね。

泉谷:全くその通りです。自分は野良犬がうろついている時代にいて、黒澤明映画『野良犬』が大好きで。戦後間もない頃のエネルギッシュな連中たちの映画なんですね、結局これは。

田家:情景がたしかにね。フォーライフはいろいろな扱われ方はしましたけども、一種のスーパースター集団みたいに扱われた面もあって。それに対して、違和感とまでは言わないんですけど、え、そうなの、 という気分もあった時に『家族』が出てこの「野良犬」があった。このアルバムはインパクトありました。

泉谷:みんなが思うように、マスコミ的にはインパクトがあったにせよ、音楽ファンにはどうだったんだろうかというのはありますよね。スターが早めに集まっちゃって、終着点を見つけちゃうとどうなの? という。居心地の悪さはやっぱりありましたね。

田家:1番あったのが泉谷さんでしょうからね。

泉谷:自分はとにかく経営の方に行くんじゃなくて、良い曲を作ろうよと。アーティスト同士の競争をしないかと何度も言ってたんだけど、うーん…… ね。

田家:なかなか言えないこともたくさんあるんだろうなと。

泉谷:ありますねー。本当に飲み会ばかりで嫌になっちゃいましたよ(笑)。

田家:『光と影』の中に「ひとりあるき」という曲がありました。団塊の世代が親になり始めた時代でもあったので、「家族」にはそういう背景もあるのかなと思ったりもしたんですよ。

泉谷:ベースに直接家族的なテーマを上手くまぶしてはいるんだけど、正直言えば、団塊の世代は家族を作るのが下手くそというか。家族が重い、みたいな。おそらく、お父さんたち、戦争をやってきた人間をものすごく恨んでいるところもある。だから、古い親父たちが大嫌い。で、断絶の世代を生むわけじゃないですか。陽水がその断絶を歌うんだけど、よく分かる。だから、自分は家族の重みが嫌だっていう。家族、めんどくせえなっていう。

田家:アルバムのタイトル曲をお聴きいただきます。「家族」。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE