2CELLOSが振り返るチェロで起こした革命、音楽とファンに捧げた10年の軌跡

さらなる快進撃、ふたりのソロ活動

その後間もなく、有望新人を敏感に察知するエルトン・ジョンにツアーの前座に起用されるなどして、着実に知名度を高めてファンを増やした彼ら。2nd『イントゥイション』(2012年)と3rd『チェロヴァース』(2015年)では、曲によってゲスト・シンガーや鍵盤奏者を交えて音に広がりを持たせ、スティーヴ・ヴァイをフィーチャーしたAC/DCの「地獄のハイウェイ」などは大いに話題を呼んだものだ。

同時にアヴィーチーの「ウェイク・ミー・アップ」を取り上げたりと、ポップでダンサブルな楽曲でより軽快な表現を試みた2CELLOSは、4作目『スコア』(2017年)でまた趣向を変えて、映画とTVドラマのサントラに特化。ロンドン交響楽団とレコーディングを敢行し、あの『ゲーム・オブ・スローンズ』に使われた曲のメドレー(ミュージック・ビデオはドラマのロケ地であるクロアチアのドゥブロヴニクで撮影)などで、スケール感を究めた。そして続く5作目『レット・ゼア・ビー・チェロ』(2018年)は、クラシックあり映画音楽あり、ロックありポップありの集大成的なアルバムに仕上げていたが、ここまで『イントゥイション』を除く4枚が見事に全米ビルボード・クラシカル・アルバム・チャート1位に輝き、“クラシック・クロスオーヴァー”とざっくり総括されるアーティストたちの中でも、破格の成功を手にするのだ。




そんな快進撃を後押ししたのは、このようなハイペースなアルバム発表に加えて、やはり精力的に取り組んだツアー活動だろう。「どんなロックバンドと比べてもらっても構わない」とステファンがライヴ・アクトとしての自信を語るように、ふたりがステージで繰り広げる、まるで四つに組んでチェロで格闘するかのようなテンション溢れるパフォーマンスは、懐疑論者たちを黙らせるだけの説得力に不足ない。それゆえに彼らは、LAのハリウッド・ボウルやロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで満場のオーディエンスを沸かせ、3年前の来日時には日本武道館公演を売り切るほどの存在に成長したわけだが、2018年末になってようやく2CELLOSとしての活動をスローダウン。かと思えば、すぐに各自ソロでの音楽作りに取り掛かり、ルカはヴィヴァルディの『四季』に新たなアレンジを加えてアルバムを制作し、ステファンもエンニオ・モリコーネへのトリビュート作品から“サマー・ビーチ・パーティー”と題したラテン・ポップのカバー・シリーズまで多岐にわたる試みを行なって、充電期間をエンジョイすることに――。




「僕らはふたりとも、2CELLOSとしてはプレイできない、様々な音楽の形式に興味を抱いている。だからここにきて、ソロ・アーティストとしての活動に専念できて良かったよ。最終的にはそうすることによって、2CELLOSとしての活動もより面白いもの、かつ力強いものになる。今後は両方を並行して続けられるよう、努力するつもりなんだ。そうすることでミュージシャンとしても人間としても僕らは満たされるわけだから」(ルカ)。

「ビーチ・パーティーから厳粛な音楽に至るまで、僕らにはどんなことでも可能なんだ。そんなアーティストは滅多にいないよ。いや、ほかには誰もいないな。みんな専門的なエリアがあるものだけど、僕らの場合は選択肢が豊富なんだ。“お葬式から結婚式までなんでも承ります”ってね(笑)」(ステファン)。

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