矢野顕子が語る、デビュー45周年のニューアルバム「このバンドだからこそ、生まれた作品」

ーー「愛を告げる小鳥」のミュージックビデオはニューヨークと日本を繋いでのリモートセッションによって構成されていました。

リモート環境は無いよりあったほうが便利ですが、生のセッションやコンサートとは全く別物だということもまたこのコロナ禍によく分かりました。

ーーこの曲の糸井さんの歌詞については?


彼の書く歌詞にはいわゆるラブソングが少ないのですが、こうした純愛というか、ただただ相手のことが好きで大切に思うという気持ちだけが書かれた曲もいいものだなぁと思いました。

ーー「津軽海峡・冬景色」はご一緒にライブもされる石川さゆりさんの代表曲ですが、このバンドの醍醐味が十二分に堪能出来るアグレッシブなアレンジがえらいことになっていますね。

そうね(笑)。コンサートで演奏してみたら全員のミュージシャン魂が燃えに燃えたのでレコーディングしました。彼らの演奏力の高さが明確に伝わるんじゃないかと。

ーーちなみにこのバージョンはすでにさゆりさんも耳にされていますね。

もちろん。元々は一緒にコンサートやった時、彼女からのリクエストでしたから。「どうなっても知らないぞぉ?」と思ったんだけど、まあ矢野顕子がやるからにはこうなりますよね(笑)。彼女は嬉しそうに拍手してくれていましたけど、本心は怖くて訊いてない(笑)。

ーー「大家さんと僕」は同名のテレビアニメの主題歌ですが「リラックマのわたし」「ISETAN-TAN-TAN」(共に2014年)のように“お題”から着想を得るソングライティングについては?

それこそ私は20代の頃から大量のCM音楽を作ってきたので、単に自分の仕事における一つの面白さだと思っています。やりたくなければ断ればいいだけだし、やりたいものだけを自由にやらせてもらえているので楽しいですよ。

ーー「なにそれ(NANISORE?)」のバンドサウンドは「津軽海峡・冬景色」と対極の味わいですが、やはり手練揃いだからこそのグルーヴで。

この演奏の肝は何と言ってもドラムです。やろうと思えばもっと大きなスケールで出来る曲ですが、今回は出来る限り4人でまとめたかったので。機会があったらホーンセクションなんかを入れて、もっと豪華なアレンジでもやってみたいですね。

ーー歌詞に「大貫妙子」や「キャロル・キング」といった矢野さんにとってのフェイバリットが登場する「音楽はおくりもの」は昨年の自粛生活期間のジョギング中に浮かんだそうですが。


12月のレコーディング直前のタイミングで最後に書き上げた曲でした。時々ミッドタウンに向かっていくコースか自由の女神が見えるバッテリー・パークを目指して行くコースをジョギングしているんですが、この曲はバッテリー・パーク行きのコースを走っている時に浮かびました。私はこれまで音楽そのものについて歌った曲というのは、おそらく書いたことがなかったはずです。長引くパンデミックの中、特にニューヨークはロックダウンもかなり長かったので、そこで改めて「やっぱり音楽ってすごいじゃん!」と気付かされたことも大きかったですね。

ーー“心燃やし 立ち上がる 気持ち”というサビもストレートで力強いですね。

私はあまり比喩的な表現が書けないので。赤ければ「赤い」としか書けないだけです。

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