矢野顕子が語る、デビュー45周年のニューアルバム「このバンドだからこそ、生まれた作品」

ーーコロナ禍に入ってからの日々はどのように過ごされていましたか?


自粛生活の最初の頃は、突然、「24時間、あなたの好きに使っていいのよ?」と言われて、「お前は有意義な時間を過ごせるのか?」と自分が試されているような気持ちでしたね。私だけじゃなく、みなさんそうだったんじゃないかしら。「今日は部屋を片付けるぞ」とか「今日は床を磨くぞ」と頑張って、達成感のあった日もあれば落ち込んでしまうくらいダメダメな日もあって。でも、人は決して生活のChores(雑事)のためだけに生きているわけじゃないでしょ? 人生って“やりたいこと”と“やるべきこと”と“やらねばならないこと”の3つを果たして、初めて本当の満足感を得られるものだと私は思っていて。

ーー確かにそうですね。


少し前、長年続いてきたキャバレーが閉店する模様を撮ったNHKのドキュメント番組を観たんだけど、そこでずっと歌ってきたお姉さんがいてね。コロナ禍もずっと練習を続けて、閉店の日にようやく歌えることになったそのかたが「100回練習するより一回の本番なの」と語る姿を観て「分かるわぁー!!」ってなりました(笑)。そこにお客さんがいるということは、演者にとって、生で聴いてもらう云々という以上に特別な力が働くものなんです。

ーーアルバム1曲目の「遠い星、光の旅。」をはじめ、今回は全10曲中4曲の歌詞を糸井重里さんが書いています。


「遠い星、光の旅。」は、かつて探査機カッシーニが撮った土星の環の下に映る青い点状の地球“Pale Blue Dot”について私が語ったツイート(※昨年9月21日)が糸井さんの琴線に触れたらしくて。彼は宇宙にさほど興味も無いし宇宙なんて死んでも行きたくないと思っているはずですが、これは書きたくて書いたという感じでしょうか。



ーー2018年のアルバム「ふたりぼっちで行こう」収録の「When We’re In Space」(※矢野顕子&Reed and Caroline)もそうでしたが、矢野さんが宇宙愛を公言していると、周りの方から宇宙の曲が集まってくるのが面白いですね。

そうか。そうかもね(笑)。

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