マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ケヴィン・シールズが語る過去・現在・未来

メンバーへの想いと新作の展望

―『loveless』がリリースされて今年で30年が経過したわけですが、今あのアルバムを振り返ってどのように感じていますか?

ケヴィン:「作って良かったな」と思っている(笑)。最近また再発に向けて自分でも作業をしていたのだけど、聴くたびに新しい発見があるというか。「え、こんなサウンドだったっけ?」「こんなことやってた?」みたいに驚くんだよね。すごく不思議な気持ちだけど、そんなふうに思える作品を作れたことは嬉しく誇りに思っているよ。

―今、新作の進捗状況はどんな感じなのでしょう。以前、「ブルース・スプリングスティーンのような曲が書けた」とおっしゃっていましたよね?

ケヴィン:あの曲は、自分ではアーケード・ファイアっぽいとも思ってるんだ。僕に言わせれば彼らってブルース・スプリングスティーンっぽいからさ。メロディをリフレインする感じとか、曲作りのスタイルとか共通するものを感じる。その曲を書き終えた時に、初めてその類似性に気付いたということなんだけど、でも2013年くらいの曲なので新作に入ることはまずないと思うよ。

―なるほど。2018年のライブで確か2曲くらい新曲を披露していましたよね。あの曲たちはレコーディングする予定はあります?

ケヴィン:答えは「イエス」だね。ふふふ(笑)。

―いつぐらいに発表する予定?

ケヴィン:願わくば、年内に出したいと思っている。全てがうまくいけば、だけど。

―MBVは、これまで断続的に活動をしながらも常にメンバーは変わりませんでした。それって本当に奇跡的なことだなと思うのですが、ケヴィンにとってバンドのメンバーはどんな存在なのでしょうか。

ケヴィン:まずコルムは、僕がギターを始めたばかりでコードもチューニングも何も知らず、とりあえずアンプに繋いでノイズを撒き散らかしていた頃から一緒だった。彼も「ビートを奏でる」ということが全く分からず、ただドラムをぶっ叩いている状態で(笑)、そんな時から一緒に行動を共にしている仲なんだよね。「音楽をクリエイトする」以前からの付き合いだから、その繋がりはとても強いし、今もそれが続いているのはものすごく幸運なことだと思ってる。今はもうしょっちゅう一緒にいるわけじゃないけれど、離れている時間があるからこそ新鮮味もあるし、常に新しい感覚で付き合えるのはお互いにいい状況なんじゃないかな。

デビーは1985年からの付き合いで、今はもうデビー以外のベーシストは考えられないよ。特にツアーに出ると、デビーには大事な役割があってね。バンドのダイナミクス、力関係みたいなところで彼女の存在はとても大きい。ある意味、僕らを仕切っているのはデビーなんだよ(笑)。ビリンダはまず、僕にダイナソーJr.の存在を教えてくれたのが大きい。彼女は音楽の趣味がとても良くて、歌も上手いしとにかくセンスがいいんだよな。メロディも、僕が思いついたものを彼女はすぐ完璧に理解して。彼女が歌うことでさらにいいメロディになるんだ。

―4人だからこその、特別な結びつきを側から見ていても感じます。

ケヴィン:でも、知っての通りそれが一度壊れてしまった。デビーとコルムがバンドから去って行ったのだけど、その後も友人関係は続いていたし、ロスに移住したコルムも時々僕を訪ねてくれたり、パブなどでセッションしたりしたこともあった。だから音楽人生においても、僕自身の人生においても、ずっと大事にしてきた関係だ。1995年から2007年くらいまでは、事実上の活動停止期間だったけど、その時もコルムは「いつかまた一緒にやりたいよね」って言ってくれてたんだ。「それがMBVじゃなくても、ちょっとしたプロジェクトでもいいし」って。そんなふうに友情関係が続いていたからこそ、2008年にMBVを再始動させるのも、とてもスムーズにいったんだよ。

―日本にはあなたたちのファンがたくさんいて、新作やライブを心待ちにしていますので、最後にメッセージをもらえますか?

ケヴィン:僕らがこうしてバンドを続けられているのは、もちろん聴いてくれていた人がいてこそだよ。今は本当に大変な時期だけど、これを超えた先にはまた明るい未来が待っていると僕は思っている。実を言えば、コロナ以前よりも僕自身は前向きになれているんだ。世界は振り子のように必ずリバウンドするから、これだけ酷い経験をした僕らにはきっとそれに見合った素晴らしいことが訪れるはずだからね。そしてMBVの新作は必ず作り上げる。今やっている自分たちの音楽にものすごくワクワクしているし、それを届けることを保証するよ。サンタクロースのようにね(笑)。

Translated by Kazumi Someya

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