小沢健二MV初監督、GIFの手法を駆使したグラフィック・デザイン・ムービー公開

ーSNSを見ていると、90年代の小沢健二像を知らない、若い、新しいリスナーも増えているようです。彼女/彼らからの反応をどう受け止めていますか?

自分と感覚の近い人が、現在の作品、そして過去につくってきたものをアンテナに引っ掛けて、応えてくれていると感じています。素晴らしい人たちに届いている。気持ちが近い、友人のような人たちに。もうずっとプロモーションらしいプロモーションはしていないにもかかわらず。これは本当にうれしい、ありがたいことですね。若い人というと、今回公募の呼びかけに応えてデザイナーとして手を挙げてくれた、21歳の言乃田埃(いいのだ・ほこり)さんや25歳の多嘉山ゆりあさんがいい例です。ライフが出た時には生まれていなかったりするのに、うれしいことに僕のリスナーで、同時に才能に溢れていて、スキルも超絶で、僕と感覚が近くて。そういう人たちと友人になって、直接やりとりしてものをつくり上げるというのは、本当にうれしい経験です。

ーMVでは「涙」の文字が雨のビジュアルで表現されています。また、漢字のパーツの一部として表音文字のひらがなが混ぜ込まれているシーンも散見されますね。また、グラフィティで書かれたカタカナがあったり。

そう、「日本語だからできることを意識する」っていうのも、最初からありました。日本語だからこそできるグラフィックデザインってなんだろう? って。日本語のリリックビデオって、何がかっこいいんだろう?と。そのお題にみんなが応えてくれた形です。あとはみんなで研究していくうちに、この映像作品は「詩」なんだなぁということは感じました。あと、大阪のモリサワフォントにうかがわなければいけない、ということも。笑

ーGIFをベースにしている理由は?

GIF動画って英語圏でのネットコミュニケーションではかなりメジャーな位置にあるんですよ。日本語のネットコミュニケーションだと、みんなスタンプや絵文字を気軽に、そしてすごく繊細に使い分けてるじゃないですか。それに相当するものが英語圏だとGIFというところがあって。インターネットミームではGIFって欠かせないものだし。だから僕の英語圏の生活では、GIFはめちゃくちゃ身近なものです。だから前からGIFを作っていたのですが、今回、日本文化の優れたデザイン感覚でGIFにアプローチすると新しいGIFの世界ができるのではないか……、という話はしました。世界のGIF界に衝撃を与えるようなものがつくれた気がします。(笑)


ーこれまでも今回もジャケット制作やグッズ制作など、様々なことをDIYされています。小沢健二ほどのキャリアがあれば全てプロフェッショナルにおまかせでもいいはず。自分の手を動かすことにこだわる理由は?

僕は若い頃から自分で会社をつくって音楽活動をやってきていて、そのこと自体がDIY感覚あふれることなんだと思う。ライブの演出だとか、ジャケットやグッズのデザインだとかを自分で舵取りするのは、実は一番自分が、無理をしない形です。そして手を動かすと、理解も深まります。今回こんなに大胆に一流のグラフィックデザイナーを集めることができたのも、僕自身が一応ソフトウェアがいじれるから、みんなの共通言語で、提案ができる自信がありました。手を動かすのが好きなんです、要するに。手を動かして損はない(笑)。

Rolling Stone Japan 編集部

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