水村里奈、音楽を踊りに翻訳するダンサー

「コンテンポラリーダンスはその人自身の正解を見つけていく表現」

2020年10月にリリースされたFAITH「Irony」MVで水村は葛藤の化身として出演している。



臨場感のあるダンスシーンでは、身体ごと空間に引っ張られるようなアプローチや、パントマイムのように相手との距離感を出す動き、顔を覆う振り付けなどを自在に用いながら、引き裂かれる気持ちに寄り添うダンスを見せている。

実は今回、水村がオファーを受けたのは3日前で、撮影時間はなんと2〜3時間だったそうだ。

「本当にあっという間でした。普段は事前にここでこの振りを入れるとか、動きのルートとかを決めるんですけど、今回はもうその場で。ただ曲はめちゃめちゃ聴いて、世界観だけイメージして行きました。ここでフレームから消えた方がいいとか、ここは対面になった方がいいとか撮りながら決めていくのは、セッションみたいで緊張感がありましたね。イメージとしては、その人の葛藤が私に反射して、内に秘めているものが一瞬見えるみたいな、一人ずつにスポットライトが当たってるような感覚です。本番は5~6テイク撮りました。私がミスしてしまうこともあるし、カメラマンさんが捉えきれなかったとか、アーティストの方々が、ちょっとこう納得がいかなくてとか、皆の『いい』が重なる瞬間を探る作業はすごく大変でした。
 でも、世界観がちゃんと作られていることが一番大事だって実感できましたね。いくら時間があっても、その曲に対する世界観作りとか、そのアーティストをよく見せられなければ、結局響かなかったりするので。そこはほんとにチームワークです」

MV出演や公演に限らず、雑誌や広告などでのモデル活動、YouTubeやInstagram等での作品発表など、活動の幅を広げている彼女に今後の展望を聞いた。

「これまでは、誰かありきの自分だったけれど、これからは自分で作り出す人になりたいです。コンテンポラリーダンスはその人自身の正解を見つけていく表現なので、そこに面白さを感じ続けています。
 今まで現場では言われた通りにすることも多かったのですが、最近はより積極的に意見を言えたり、提案できたりするようにもなってきて。ちょっと勇気もいるんですが、いい作品作ろうとか同じ目標に向かってる人だと受け入れてくれて、お互いがより納得したものができるんだと分かってきました。
 海外のアーティストと一緒に踊ることも目標の一つです。特にFKJさんのチルな音楽が好きなのでいつかセッションしてみたいなって。
 観ていて活力の湧くようなダンスも好きなんですが、身体の力がふわっと抜けるような、リラックスできるダンスも届けてみたいです。あとは、ダンサーがもっと楽しめるウェアを作りたいっていうのも目標としてあって。今後もしかしたら、カフェをやりたいとか思うかもしれないし、その時の気持ちを大切にしつつ、ダンスから派生した、自分にしかできないことにも興味があります」

水村里奈はダンスという言語を使って、表情豊かに語りかける。ジャンルを飛び越え、新しい動きを紡ぐ彼女から目が離せない。

水村里奈(みずむらりな)
コンテンポラリーダンスアーティスト。幼少よりクラシックバレエを始める。東京都立総合芸術高校・舞踊専攻・コンテンポラリーダンスコースに1期生として入学し、コンテンポラリーダンスと出会う。日本女子体育大学・舞踊学専攻を奨励生として卒業し、フリーランスのキャリアをスタートさせる。卒業後はフリーランスダンサーとして活動の幅を広げ、ゲスの極み乙女。等を始めとするアーティストライブ・ミュージックビデオにて振付を担当。その他、RADWIMPS、水曜日のカンパネラ、須田景凪、LUCKY TAPESなど多数のアーティストのミュージックビデオに出演。ミネラルウォーターブランドevian主催の盆踊りイベントでは、オリジナル盆踊りの振付を担当するなど、美しくキャッチーな振付が好評を得ている。また、ダンサー・振付家と並行して、ブランドの広告モデルやビューティー雑誌モデル、着物モデル等の撮影も幅広く行う。
https://www.instagram.com/rina_mizumura/
https://www.youtube.com/c/RinaMizumura

取材・撮影 石山蓮華
電線愛好家としてメディアに出演するほか、日本電線工業会「電線の日」スペシャルコンテンツの監修、オリジナルDVD『電線礼讃』のプロデュース・出演を務める。俳優として映画『思い出のマーニー』、舞台『五反田怪団』、『遠野物語-奇ッ怪 其ノ参-』、川谷絵音ソロプロジェクト『独特な人』、NTV「ZIP!」「有吉反省会」などに出演。文筆家として「ホンシェルジュ」「月刊電設資材」「電気新聞」「She is」などに連載・寄稿。YouTube公開後、590万回再生を突破した「純猥談」シリーズの12月24日公開『私たちの過ごした8年間は何だったんだろうね』に主演、同月26日より劇団ノーミーツ オンライン長編演劇公演『それでも笑えれば』、2021年1月韓国現代戯曲ドラマリーディングVol.Ⅹ『加害者探究 付録:謝罪文作成ガイド』に出演。
https://twitter.com/rengege

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