水村里奈、音楽を踊りに翻訳するダンサー

水村里奈(Photo by Renge Ishiyama)

コンテンポラリーダンサー・振付家として活躍する水村里奈に、女優の石山蓮華が迫った。「Rolling Stone Japan vol.14」掲載の連載「CLOSE-UP」をお届けする。

「踊るときは、曲ごとに違う私に化けるというか、その曲の世界で生きてる人になろうとしています。曲はその人の子供のようなものだと思っているし、出会ったバンドさんが作った曲で踊れるってありがたすぎる。恐れ多い気持ちと、さらに良い景色を見つけたいっていうワクワク感があります」

水村里奈は音楽を踊りに翻訳できるダンサーだ。

10歳からバレエを始め、高校時代に出会ったコンテンポラリーダンスに居場所を見つけた彼女は、大学在学中、RADWIMPS「光」MVでダンサーとして初めて映像作品に出演した。



「今まで経験したことのない面白さを味わいました。大学卒業間近だったんですけど、こういう道で行きたいって一気に固まって。チームワークの高揚感というか、バンドのメンバーさんや、監督さん、衣装さん、色んな職業の方がひとつの現場に集まって、連携を取りながら作品を作っていく様子を初めて目の当たりにしました。8人のダンサーのうちの1人でしたが、その時からソロで出たいっていう気持ちが出てきて。わがままなんです(笑)」

その後、ゲスの極み乙女。「秘めない私」MVでは出演と振付を担うなど、様々なアーティストのMVやライブに多数出演している。



水村の手脚は、空気のように音もなく伸ばされたかと思えば、鉄球のような速さで次のポーズに変わる。ターンやジャンプ、どんな動きでも重心の移動が滑らかで全くぶれない。予測不能に流動するダンスは一瞬で観客の目を惹き付ける。

なにより、リズムとメロディを捉える精度の高さも、アーティストや映像監督達から信頼される理由の一つとなっているだろう。

「MVやライブでダンスを踊るときは、オファーを頂いてから、毎日30回以上はその曲を聴きます。歩いているとき、寝る前、ご飯を食べるときとか、いろんなシーンで聴いてみると、さっきは気づかなかったけど、ここにこんなメロディがあるとか、見ているものと音楽がリンクする瞬間とか、たくさんの発見があります。日常的に聴いて聴いて聴いて、1と2の間を探っていくような作業をしていると、身体がしたい方向に向って動いていくんです。
 ここでは走ってる、サビでは二人で向き合ってるよなという感じで、ぼやっとしていた情景がクリアになって、楽曲と同じ世界観の中でダンスを作れるようになるというか。即興で踊ることもあるのですが、自分の中にイメージがなくなった瞬間が一番怖いですね。何も動けなくなっちゃう。説得力もないと思うし、その曲である意味がなくなっちゃう気がするので。
 歌詞はストレートに書かれる方もいるし、リスナーに想像させるというか、あえてあまりヒントを出さない書き方をされる方もいるので、私もすごく理解しようとはするんですけど、あえてアバウトなまま汲み取る時もあって。それこそ川谷絵音さんなら、歌詞の中で急に意外な言葉が入るような時もあるんですが、それはわざと違和感を与えるような風にやってらっしゃるから。
だからと言って思い切り振り幅を出すというよりは、その曲の流れであるものとして認識するというか……。難しいです(笑)」

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE