ラップバトルにも参戦する女性MC、セルラ伊藤の「思想がないというメタな思想」

セルラ伊藤(Photo by TOKKUN)

セルラさんを知ったのは、とびきり美人の友達が「私のお姉ちゃん、ラッパーなんだ」と、教えてくれたMVのURLからだった。そのラッパーは「脂肪細胞の申し子・セルラ伊藤」という、ちょっと自虐めいたMCネームを名乗っていた。

※この記事は6月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.03』に掲載されたものです。

「アイスクリームポップアップトゥギャザー」のMVで、セルラさんはふわふわのパニエを履き、アイドルソング的なトラックでぴょんぴょん、それはもうほんとうにぴょんぴょん飛び跳ねていた。ほんの5歳の頃に憧れたアイドルがそのまま少女を通り越したように、ひとりの女性がぴょんぴょん跳ねて歌っていた。普段は会社員をしているというその人の、めちゃくちゃに楽しそうな姿とキャッチーなメロディ、そしてどこか生真面目な眼差しが頭から離れなかった。

「絶対忘れるな(以下、ぜわす)のメンバーの多くは、アイドルオタクでもあるんです。9月以降に音源をリリースするんですけど、そこでは自分たちが、会社、オタクとしての現場、ぜわすとして出る現場を自在に往来しているということを押しだしたリード曲を出そうとしていて、それは私たちならではかなって。オタクと会社員とラッパーを行ったり来たりする自分をメタ的に見ているというか。『絶対忘れるなのテーマ』という曲にも“思想がないというメタな思想”という歌詞があるんですけど、メンバーの志賀ラミーを筆頭に、そういうものの見方が好きなのかもしれません」



セルラさんは週休2日の会社員として働きながら「絶対忘れるな」のクルーや、フリースタイルラッパーとしてステージに立ち、たまにスナックのママとしてカウンターに入る。

「ぜわすはもともと全員、大学のバンドサークル仲間で。卒業して何かやりたいってなったときに、楽器を持ってスタジオに行ったりするのがだるいという話をしだして(笑)。楽器が重い、めんどくさいと(笑)。それならPCと体ひとつで宅録みたいなことをしてみようと、だいぶ消極的な理由でラップを始めました。

みんな社会人としての生活を大事にしていて、でもそれだけじゃ潤いがないからやりたい、みたいなところがすごくあって。仕事や家庭は大切にしつつも、働いてて感じるストレスとか愚痴とか、カッコよく言うと悲哀みたいなものを出しながら面白くやれればいいなと思っています」

セルラさんはおよそ1時間のインタビューの間、4、5杯のお酒をさらさらと飲んでいた。特に「香ばし茶ハイ」を3杯ほどお代りしていたのに顔色はまったく変わらなかった。香ばし茶ハイってどんな味だったんだろう。ともかく、この世には香ばし茶ハイとただの緑茶ハイがあるのを初めて知った夜だった。

「今は“スナックしろくま”というところで月に一日、店長みたいなことをやっているんですが、そこは 今度音源を出すパーフェクトミュージック(以下PM)さんの系列だったり、ラップバトル出場もPMの方のお誘いがきっかけだったりと、ぜわすの活動からいろいろと広がっています。来た話はよっぽどじゃなければ断らないというのを信条にしているのもあるかな。会社員としての仕事も、ラッパーも、スナックのママも、私にできることというか私にやってほしいと思われること自体ありがたいので、言われたらとりあえず『やります』って。

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