ラナ・デル・レイ新作は新しいのか? レトロなのか?

ラナ・デル・レイ(Photo by Mat Hayward/Getty Images)

音楽評論家・田中宗一郎と映画・音楽ジャーナリストの宇野維正が旬なポップカルチャーの話題を縦横無尽に語りまくる、音楽カルチャー誌「Rolling Stone Japan」の人気連載「POP RULES THE WORLD」。

2019年9月25日発売号の対談では、ニューアルバム『ノーマン・ファッキング・ロックウェル!』が全米初登場3位につけ、海外の有力メディアから軒並み絶賛を受けているラナ・デル・レイに注目。これまでもレトロでノスタルジックという批判を浴びることがあった彼女だが、「同時代のサウンドに対する目配せは皆無」だという新作は果たして新しいのか、レトロなのか、田中と宇野が議論を交わしている。



宇野:この連載の一回目でも、自分は彼女の前作『ラスト・フォー・ライフ』は2017年の年間ベスト10枚に入れたんだけど、タナソーさんも評価してましたよね。それに、去年2018年のベスト・ソング10の時点でもう既に「ヴェニス・ビッチ」を入れてた。本作の3曲目に入ってる10分近くある曲。前作にはエイサップ・ロッキーやプレイボーイ・カーティが参加してて、自分はそっちの新機軸に興奮してたんで、「ヴェニス・ビッチ」を最初に聴いた時はまた随分まったりした曲出したなって思ってたんですけど(笑)。

田中:同時代のサウンドに対する目配せは皆無だからね。言ってみれば、懐古的なサイケデリック・フォーク。でも、やっぱり新しい。10分近い尺もそうだし、ギターのオブリガードが中心で、リズム自体も完全にエコーの後ろに引っ込んじゃってる音像とか。

宇野:確かに、ひとつひとつの音が綺麗に分離してるプロダクションは、間違いなく2010年代を通過したサウンドになってる。今では夢中ですよ(笑)。

田中:あと構成も面白い。パートがいくつもあるんだけど、コーラスらしいコーラスもなくて。和声の展開も前作からまたきちんと変化してる。前作『ラスト・フォー・ライフ』はそうした50年代のテイストをどの曲も意識的に使っていて。でも、この曲の場合、和声の展開がもう少し薄味で、その塩梅がまた絶妙。で、コーラス部分のCからC7に行くところとかマジ最高。



宇野:改めてこの甘美で沈静な67分のアルバムを聴くと、やっぱり彼女は時代のトップ・ランナーなんだと確信しましたね。

本誌での2人の会話は、彼女のアメリカ文化に対するオブセッションやその優れた批評性、ジャック・アントノフや長年のコラボレーターであるリック・ノウェルスのプロデュース・ワーク、そしてラナ・デル・レイとビリー・アイリッシュとの位相にまで話が及んでいる。

Edited by The Sign Magazine



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