『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』共同脚本家が語る、最終章製作の内幕

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』撮影セットでのクリス・テリオ(左)とJ・J・エイブラムス監督 Jonathan Olley /Lucasfilm Ltd.

いよいよ今週金曜日に日米同時公開される『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。今回J・J・エイブラムス監督と脚本を手がけたクリス・テリオのインタビューをお届けする。スカイウォーカー伝説の最終章誕生の経緯、そしてその脚本製作に至る内幕とは?

『フォースの覚醒』でレイが何者なのか、どこから来たのか、ということが問題になって、『最後のジェダイ』ではある意味否定的な回答が出される。『スカイウォーカーの夜明け』ではこの2つを合わせて、第3の答えが提示できるだろうね。ーークリス・テリオ

J・J・エイブラムス監督が、のちに『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』となる映画の共同脚本家を探していた時、それまで組んだことのない人物が頭に浮かんだ。それが『アルゴ』でアカデミー賞脚本賞を受賞したクリス・テリオだった(彼はその後『バットマンvsスーパーマン/ジャスティスの誕生』『ジャスティス・リーグ』も手掛けるが、それはまた別の話)。エイブラムス監督は『アルゴ』をとても気に入っていて、最近テリオが書いた未製作の新作政治スリラーも高く評価していた。「骨太で、無駄のない、知性あふれる脚本」と、監督はローリングストーン誌に語っている。「ひとつ質問を投げると、1ページ分の脚本が返ってくる。こちらの希望をちゃんと押さえてあるんだ。彼の文体にはウィットや洗練さがあった。すぐにピンときたよ」 弊誌のデジタル版限定スター・ウォーズ特集で(他にアダム・ドライバー、エイブラムス監督、Lucasfilmのキャスリーン・ケネディ社長、ビリー・ディー・ウィリアムスのインタビューを掲載)、テリオは12月20日日米同時公開『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』の制作行程を詳しく語ってくれた。

ーJ・J監督から聞いたのですが、あなたが『スター・ウォーズ』映画以外の本やアニメ、コミックブックにも精通していることに驚いていました。そうした知識が、今作の実際の作業にどう役立ちましたか?

一種の多変数関数だね。よーく見ると、自分が思いつくようなストーリー展開はどれもすでにやり尽くされてしまっているからね。それも、素晴らしい出来栄えなんだ。小説の著者や、コミックブックの作者、(長年Lucasfilm社に勤務する監督兼プロデューサーの)デイヴ・フィローニやTVシリーズの製作陣の手によってね。だから自分は新しい方向性を切り拓きたいと思うわけだけど、同時に過去の素晴らしいアイデアから学びたいという気持ちもある。例を挙げれば、ティモシー・ザーンの小説は傑作だ。『スター・ウォーズ アフターマス』(チャック・ウェンディング著)も素晴らしい。『クローン・ウォーズ』や『反乱者たち』(いずれも製作指揮はフィローニ)には、僕が今まで見た中でもトップクラスに入るエピソードもあった。それを全部取り入れていこう、というわけさ。

だけど同時に、映画シリーズがもつフラッシュゴードン的な冒険シリーズの要素も残したい。ちょっと脱線して銀河系の重箱の隅を掘り起こしつつ、ジョージ・ルーカスの原案にも忠実でありたい。ストーリーがロケットから飛び出して、そのまま展開し、登場人物が必ずピンチに直面し、最初から最後までハラハラどきどきさせなくちゃならない。拡大する宇宙の出来事をすべてDNAに焼き付けて、かつ躍動的で手に汗握る斬新な冒険を盛り込むという目の前の作業から逸れない、というのが理想だ。

ーあなたにオファーする前に、監督は今作のあらすじをどこまで固めていたんでしょう?

彼とラリー・カスダンは(『フォースの覚醒』製作中に)ある程度のアイデアをまとめていた。キャラクターの展開の仕方といった大まかな方向性をね。僕はプロットにはタッチしないようにしているんだけど、J・Jは常に観客にどんな風に感じてほしいか、明確な考えを持っている。僕ら脚本家の仕事は、そうした感情を引き起こすストーリーを作ること。今回も最初はノーアイデアからスタートした。“ボード”という名前のWordドキュメントがあってね。もともとはホワイトボードにアイデアを書いていたんだけど、そのうちWordを使うようになったので、そのまま“ボード”って呼んでいる。このファイルにアイデアをどんどん書き込んでいって、最終的にはびっちり121ページのファイルになった。そこから面白そうな筋書や世界観、登場人物が行きそうな場所、登場人物同士の組み合わせを何パターンも考える。ダンスの振り付けのような感じかな。

例えば、登場人物たちはどこで出会うだろう? 出会ったら、どんな会話になるだろう?フォースとジェダイについて、すでに判明していることも未知のことも含めて、銀河系を舞台に政治的、歴史的、精神的にどんな新展開が作れるだろう? 生み出せるだろう? そうやってまっさらな状態から始めた。まるで2人の子供が毎日集まって、話し合ってるみたいな感じだったよ。OK、最後のスター・ウォーズにはこんなシーンが見たいな、とか、こういう設定だったら面白いんじゃないか、とか、レイがこんな難題に直面するだろう、とかね。そしたら、次のミーティングに進めるものを取捨選択する。興味が失せてしまったアイデアもあるだろうし、もっといい方法があるはずだと思うものもあるだろう。そして最後は砂浜の上のウミガメよろしく――孵化したウミガメのように、何千というアイデアが海へ向かっていき、その中のごく一部だけが海にたどりつける。もっとも強固で、映画に耐えられるものだけがね。

Translated by Akiko Kato

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