音楽評論家の田中宗一郎が論じる、「ジャンルのクロスオーバーの果てにポップが辿り着いた均質化」とは?

ロザリア(Photo by Rick Kern/WireImage)

音楽評論家の田中宗一郎と映画・音楽ジャーナリストの宇野維正が旬なポップカルチャーの話題を縦横無尽に語りまくる、音楽カルチャー誌「Rolling Stone Japan」の人気連載「POP RULES THE WORLD」。

2019年6月25日発売号の対談では、テイラー・スウィフトやケイティ・ペリーといった2010年代を代表するビッグネームや、ロザリアやホールジーといったライジングスターが挙って発表した新曲を分析し、近年のフィメール・ポップは均質化の傾向にあると田中が論じている。

田中:ロザリアの「Aute Cuture」は、もはやフラメンコのリズムがグローバル・ポップの一要素になったっていう証明みたいな1曲。でも最近思うのは、ラテン系のリズムも含めて、新たなサウンドがすぐにEDMにもポップにもラップにも取り込まれて、それぞれに区別がつかなくなりつつあるってこと。それと、ホールジーとかケイティ・ペリーとかの新曲も、言ってみればサウンド面での新しい提示は特にない。ここ3年に起こったことが何もなかったかのようなテイラー・スウィフトの「ME!」もそう。カーリー・レイ・ジェプセンのアルバムも80年代エレ・ポップ的な彼女自身のシグネチャー・サウンドが時代の均質化に飲み込まれてしまったような作品でさ。相変わらず歌詞は最高だし、日本のシティ・ポップみたいな和声と構成の曲もあったりして、すごくいいんだけど。

ROSALÍA - Aute Cuture



Taylor Swift - ME! (feat. Brendon Urie of Panic! At The Disco)



こうした様々な新曲の傾向から、田中は最近のトレンドは「均質化」という方向に向かっていると考察している。

田中:要するに、トレンドはそういうことなんだと思うな。ジャンル横断的というよりは、すべてのジャンルが交じり合ったことで、均質化というベクトルに向かっている。と同時に、トラップがすべての中心にあって、いろんな多様なサウンドがそこからスペクトラム状に拡がっていた数年前と比べると、それぞれがそれぞれのアイデンティティに回帰していくという見方も出来るかもしれない。

本誌での2人の会話は、エド・シーランやジャスティン・ビーバーといったビッグスターの現在の立ち位置や、ビヨンセが『ホームカミング』をリリースした意義などに及んでいる。

Edited by The Sign Magazine

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