アメリカ進出の足がかりとしてユニバーサル・ミュージックの傘下インタースコープと契約し、2月には『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』への出演を含むTVデビューを果たしたBLACKPINKだが、4月12日のステージは米国内で初のフル・パフォーマンスであり、またコーチェラにK-POPのガールズ・グループが出演することも史上初。さらに通常のYouTube中継に加え、NY・タイムズスクエアの大型電光掲示板でもライブが生中継されるとあって、彼女たちに賭けるYGエンターテインメントの本気度が伺い知れる。今年1月にLISAの故郷タイ・バンコクでキックオフしたアジア・ツアーも、4月5日にドロップされた約10カ月ぶりのニューEP『KILL THIS LOVE』も、すべてはコーチェラの晴れ舞台に向けて照準を定めていたことは疑う余地もないだろう。
そして、YouTube史上最速の1億再生突破が話題となった新曲「Kill This Love」のMVも衝撃的だった。『スーサイド・スクワッド』のハーレクインを思わせるLISAのヘアメイクや、『トゥームレイダー』のララ・クロフトをパロったJENNIEの衣装など触れるべきポイントは多々あるが(4日間も徹夜して撮影されたのだとか)、けたたましいホーンとマーチングドラムに導かれる終盤のフォーメーション・ダンスは、明らかに昨年のコーチェラで最大のハイライトとなったビヨンセのステージ=ビーチェラを意識したもの。そのルーツをたどれば当然、社会的不平等や人種差別に訴えたジャネット・ジャクソンの「Rhythm Nation」もあるわけで、BLACKPINKの全曲を手がけるプロデューサーのTEDDYが、青春時代に韓国人として辛酸をなめたアメリカのショービジネス界にガチで殴り込みをかけた1曲だと考えると胸が熱くなる。「DDU-DU DDU-DU」のキリング・パートでは二丁拳銃を撃ちまくっていたBLACKPINKの4人が、ショットガン(大砲という説も)に持ち替えた殺傷力の高いダンスの振り付けも強烈だ。
かつてはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン復活の舞台としても選ばれる「硬派」なロック・フェスという印象を持たれていたコーチェラだが、史上4人目の女性ヘッドライナーに抜擢されたアリアナ・グランデと並んで、BLACKPINKの出演そのものがコーチェラの歴史をひっくり返し、これからの女性アーティスト躍進の追い風となる――。そんな予感を確信に変えるには、『KILL THIS LOVE』は充分過ぎるほど鮮烈なカムバックだった。