南部ソウルの新世代、セント・ポール&ザ・ブロークン・ボーンズが語る成功までの歩み

―ブロークン・ボーンズは、2000年代の半ば、ポールとジェシー・フィリップスが出会ったことがきっかけで始まったそうですが、どんな出会いだったんでしょうか?

僕たちはバンドでプレイして出会ったんだ。彼は楽器店で働いていたんだけど、そこに僕が一緒にバンドをやっていたヤツも働いていたんで、ジェシーは僕がいたバンドでベースを弾くことになった。そして意気投合したんだ。随分昔のことのように思えるな。実際昔だけど、僕たちはすごく仲のいい友達になった。でもそのうち、「僕たち、これからの人生どうすればいいんだ?」って思うようになって、「有終の美を飾るために、レコーディングをして僕たちの音楽関係に終止符を打って、別々の道を歩もう」と思ったんだけど、実はそこからザ・ブロークン・ボーンズが生まれたんだ。クレイジーだよね(笑)。ジェシーは僕の結婚式の時の付添人で、親友であり、ビジネス面ではバンド仲間という稀な関係なんだ。

―お2人の音楽の趣味は同じだったのですか?

そうだね。彼が僕のアパートにやって来た時、僕はトーキング・ヘッズの『Remain In Light』を持っていたんだけど、それを見た彼は「あっ!」って言った。僕たちの趣味は同じだったんで、ソウルについて、そしてあらゆる音楽についての話をした。意気投合したよ。僕は教会で歌って育ったんで、彼は「じゃあ、それを元に曲を書こうよ」と言った。そうして始まったんだ。



―ブロークン・ボーンズというバンド名は、どんなところから?

あれはジェシーが考えたんだ。僕は自分の名前なんか入れたくなかったけど、“セント・ポール”の部分はからかい半分なんだ。僕は教会で育ったし、酒も飲まないんでね。絶対に飲まないわけではないけど、こうすると面白いと思ったんだろう。ブロークン・ボーンズは、僕たちが最初に書いた曲が「Broken Bones And Pocket Change」で、「Broken bones and pocket change That is all she left me with」というくだりがあったんだ。つまり、このバンドは金がなくなったってこと(笑)。



―おっしゃるように、あなたは10歳の頃から教会で歌っていたそうですね?

4歳の時に始めたんだ。物心ついた時からとにかく歌ってきた。

―その後、いわゆる世俗の音楽にも興味を持つようになったわけですよね?

そうだね(笑)。教会も好きだったけど、大きくなるにつれ、外の世界に目を向けるようになったんだ。僕は人口800人の町で育ったんだけど、外にもうちょっと目を向けるようになったら、そっちが大好きになったんだよ。それでバーで歌ったりギターを弾くようになったんだ。

―その手の音楽のどんなところに惹かれたのでしょうか?

外界から隔離された狭い世界で生きていたところへ、ビートルズやローリング・ストーンズといった音楽を聴くと、「ワオ!」って思うよね。人生や音楽観が変わるよ。それまで、僕にとっての音楽は神との交流だった。それがビートルズやストーンズ、レディオヘッドまでを聞くと、教会音楽でないものにハマるようになったんだ。本を読んだり、音楽を聴いたりした。遅れを取り戻さないといけない気がした。「早くビートルズの曲を覚えなくちゃ!」って思ったよ。今思えば変だけど、なんせ小さな町でのことだったからね。でも、素晴らしかった。ある意味、宗教を見出したようなものだったよ。そういった音楽は僕の人生を変えたんだ。

―教会音楽以外で最初に惹かれたのは、誰の何という曲だったか覚えていますか?

子供の頃、教会音楽以外で聴いていたのはソウルだった。オーティス・レディングにサム・クック、そしてスタイリスティックスという70年代のグループがいた。サム・クックの「A Change Is Gonna Come」とか、アレサ・フランクリンがいいシンガーだと思った。今でもそう思っているよ。彼らはいつの時代にも優れたシンガーだもの。それからティーンエイジャーになると、レディオヘッドの『OK Computer』とかを聴くようになった。「これ、何だ?」って思ったのを覚えているよ。

―教会で歌っていた経験は、現在のバンド活動にどんなふうに役立っていますか?

100%役立っているよ! ライブで歌うということは、そこにいるみんなと心を通わせることだと僕は思っている。本当に素晴らしいコンサートを観ると、クレイジーな気分になる。心が通い合っている気がするんだ。教会でも、ライブでも、僕は常に100%の力を出して歌う。ライブに4人しかいなくても、5万人もいても、自分が持っている力を全て出し切るんだ。

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