30年ぶりのアポロ・シアター凱旋、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックの過去〜現在

あの夜、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックに黄色い声援を送る若いファンはいなかった。まだ「ライト・スタッフ」の振り付けを妹と一緒に踊るファンが出現する前の話なのだから。この曲の振り付けは、彼らの振付師がモリス・デイ&ザ・タイムの「ジャングル・ラヴ」から拝借したものだった。

「誰も俺たちのことなんて知らなかった」と、古いビデオテープでは童顔の15歳だったマッキンタイアがいう。「どんなライブも『俺たちVS世界』に思えたものさ」と。彼はビデオの中で観客を煽っている若い自分の姿に感心しているように見える。「あの当時、俺たちはドラッグを一切やっていなかったけど、この姿を見ると、まるでドラッグでハイになっているみたいな熱量だな」

今では40代となったニュー・キッズは、間もなくさっきから思い悩んでいた問いの答えを見つけることになる。テープに映し出された初々しい表情の自分たちが自己紹介を始め、年齢と星座を言った。「この年齢が正確なら、ダニーとジョーダンの誕生日の間ってことになる」とワールバーグ。そこから計算すると、アポロ・シアターのアマチュア・ナイトに出演したのは1988年5月の15日か16日になるらしい。ニュー・キッズがシーンに躍り出た夏が来る少し前だ。彼らの登場によってR&B風味のポップ・ミュージックというジャンルが開花し、その後、マーキー・マーク、ファンキー・バンチ、バックストリート・ボーイズ、イン・シンク、ジャスティン・ティンバーレイクへと続く道が開いたのである。1988年の夏、彼らはティファニーのショッピングモール・ツアーのサポートを行い、あっという間に彼女のお株を奪ってヘッドライナーへと昇格した。1988年の秋には、アメリカ国内の何千何万という10代の少女の心を射止めてしまう。そして、今度はアポロに招かれて、全国放送のテレビ番組に初登場するに至った。

そして2018年10月7日、アポロでのパフォーマンスを放送した「ショータイム」から30年の時を経て、ニュー・キッズがアポロに帰ってきた。そして、涙で声を詰まらせながら「今日は俺たちが互いに恋に落ちてから30年の記念の夜だ」と、ワールバーグが客席のファンに向かって語りかけた。

一日では消化しきれない過度の感傷だと感じる人は、次の言葉への心の準備をしてほしい。「俺たちは完全で完璧な感傷が大好物なのさ」と、グループのリーダーでファン軍団の首謀者ワールバーグが認める。の2階席が揺れるほどのショーは、ここ10年間彼らのバックを務めているバンドの伴奏に合わせて、ノスタルジアと感涙、そしてプライド満載で進行した。ニュー・キッズの成功を後押ししたエネルギー源、つまり“クールと思われなくても上等だ”という純粋で解放された心意気を、彼らはライブの最初から最後まで見せ続けたのである。


Photo by Marcello Ambriz

今回のアポロで、ニュー・キッズは『ハンギン・タフ』収録の全10曲を披露した。懐かしの振り付けはもちろん、10年前の再結成後に満員のアリーナで同アルバムのヒット曲をパフォーマンスしながら研ぎ澄ました熟練のステージングも加わっていた。彼らは眠っていた楽曲も数曲目覚めさせ、ファンのヴォルテージは上がる一方だった。プロデューサーのモーリス・スターに鍛えられて出ていた10代の頃の音が今となってはもう出なくても、ファンは自分のアイドルに声援を送り続けた。軍隊のユニフォームを着て、ニュー・キッズの人気絶頂期には自分を「将軍」と呼んでいたスターは、このコンサートに招かれていたが、フロリダの自宅で病床にあるため会場に来ることは叶わなかった。ニュー・キッズとスターの関係は師弟関係として長らく捉えられていたが、ありきたりな師弟関係とは少し異質なものだったようだ。

Translated by Miki Nakayama

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