奇祭・バーニング・マンのクリエイターに学ぶ、シェアリングの未来

世界有数の奇祭といわれる〈バーニング・マン〉に携わるジェン・サンダー(Photo by Takanori Kuroda)

世界有数の奇祭といわれる「バーニング・マン」。先日、バーニングマンのグローバル・イノベーションを担当するジェン・サンダーが来日した。彼女を日本に呼んだのは、昨年誕生したスタートアップ支援コミュニティの「EDGEof」だ。両者が目指す「シェアリング」の未来を探る。

スタートアップ支援コミュニティとして、2017年に渋谷に誕生した「EDGEof」。世界中のスタートアップや起業家、投資家、クリエイターにエンジニア、メディアから研究者、各国政府機関にいたるまで、あらゆるイノベーティブな才能を繋げ、革新的事業の創出を加速させていく「EDGEof」は、カルチャーの発信地である渋谷を最初の拠点として、グローバルで多様な人のつながりが様々なイノベーションを生み出していく環境を構築していくという。

今回は、その「EDGEof」創設メンバーであるケン・マスイとトッド・ポーター、そして、知る人ぞ知るアメリカの大規模アートイベント〈バーニング・マン〉に、過去5年にわたって関わってきたジェン・サンダーとの鼎談を敢行。スタートアップ支援を目的とする「EDGEof」と、世界有数の奇祭といわれる〈バーニング・マン〉、一体どこに共通点があるのだろうか。

ー毎年アメリカ合衆国で開催される〈バーニング・マン〉は、日本では知る人ぞ知る大規模なイベントです。まずは、その概要からお聞かせください。

ジェン:元々は1986年、サンフランシスコのベイカービーチで、ラリー・ハーヴィーという人がカジュアルなパーティーを開催したのが始まりです。そこで、材木を組み合わせて高さ約2.4mの人型のオブジェを作って燃やそうということになったのですが、公共のビーチだったので、周りの人たちは何が起こったのか分からなかった。アートを燃やす集団を見て、だれかの誕生祝いなのか、何か宗教的な集会なのか、それとも恐ろしいことが起きたのか、単に騒いでいるのか……。


Photo by Takanori Kuroda

ーでも、それが逆にムーヴメントになっていったわけですね。


ジェン:ええ。最初は殆どが大工さんの集まりで、誰かが作ったオブジェに他の誰かが別のオブジェをくっ付けて、そうやって様々な形をした巨大なオブジェになっていったんですね。それを「ザ・マン」と名付けた。そのイベントは年々大きくなっていき、1990年には500人もの人が集まりました。「ザ・マン」も高さ12メートルを越す大掛かりなものになったので、開催場所をベイカービーチからブラックロック砂漠というネバダ州の砂漠に移したんです。

ーそれ以来バーニング・マンは、毎年8月の最終月曜日から9月の第一月曜日まで、ブラックロック砂漠で開かれるようになったと。

ジェン:そうです。何もない砂漠に街を作り上げ、そこで出会った隣人たちと共同生活を営み、そして一週間後に全てを無に還すわけです。その間、人々は作りたいものを作って自分を表現する。例えば、エベレストに登頂したことのある医者が病院を作ったり、様々な国を飛行した経験のあるパイロットが飛行場を作ったり。ラジオ局や郵便局を作るものもいれば、絵画や彫刻を作る者もいます。パン焼き教室にヨガのワークショップ……。資材は全て、各自が持ち込むんです。そして、気がついたらいろんな人が、自分のアイデアをテストする場所になっていきました。

ーバーニング・マンには、人々が共有する根本理念があるそうですね。

ジェン:「Radical Inclusion(あらゆることを受け入れる)」、「Gifting(与える)」、「Decommodification(非商品主義)」など10ヶ条の基本理念を共有しています。きっと日本人の皆さんは「ゴミを持ち帰る」なんて当たり前の発想だと思うのですが、10ヶ条のうちの例えば「Leaving No Trace(飛ぶ鳥跡を濁さず)」などは、なかなか実践が難しく課題として残っていますね。

ーバーニング・マンの意義は、どこにあるとジェンさんは考えていますか?

ジェン:隣の人とコミュニケーションを取り、助け合ったり分け合ったりすることで、パラダイムシフトが起きる。家族や友達だけじゃなくて、他人同士がどう共存していけるかを教えられる場所であることが、一番大事なポイントだと私は思います。都会に戻り、バーニング・マンのメンタリティを保ちながら仕事をしていると、それまで消極的だった自分が積極的になり、投資や金融資本主義に頼らずに生きていこう、自分が住みたい町、住みたい世界を作っていこうと思えるようになったのは、個人的に目覚ましい変化ですね。

ーそんなジェンさんから見て、EDGEofの理念、活動はどのように感じていますか?

ジェン:例えば自然との調和だったり、シェアリング精神だったり、高いホスピタリティだったり、日本文化そのものがバーニング・マンの理念と共通するものがあります。その上で、EDGEofの活動をとても興味深く感じています。渋谷にプラットフォームを作るという発想も面白いですし、トッドはバーニング・マンの仲間ですからね。何かサポートできる事があれば、是非そうしたいと思っています。

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