『パンプ・アップ・ザ・ボリューム』マーズのメンバー、スティーヴ・ヤングが逝去

またヤングは、4ADの創始者であるアイヴォ・ワッツ=ラッセルを中心とした流動的プロジェクト、ディス・モータル・コイルにも参加した。コクトー・ツインズやデッド・キャン・ダンスのメンバーも参加した同プロジェクトはオリジナル曲だけでなく、所属アーティストによるレーベルメイトたちのカヴァーを多数発表した。スティーヴンはビッグ・スターズの『ホロコースト』のカヴァー、そしてオリジナル曲『涙の終結』でピアノを弾いている。また彼は同プロジェクトの2作目『フィリグリー・アンド・シャドウ』にも参加している。

その数年後、スティーヴンとマーティンはA.R. ケインのアレックス・アユリとルディ・タンバラと共に、エレクトロ・ファンク・ユニットのマーズを結成。ほどなくして、C.J. マッキントッシュとDJ デイヴ・ドレルをゲストに迎えたアップビートでスクラッチが印象的なシングル『パンプ・アップ・ザ・ボリューム』を発表する。ジェームス・ブラウン、クール&ザ・ギャング、パブリック・エナミー、トラブル・ファンク等の曲をサンプリングした同曲は世界中を席巻した。18週間にわたってランクインし続けたイギリスのナショナルチャートでは1位に輝き、アメリカでリリースされた別バージョンも最高13位を記録した。『パンプ・アップ・ザ・ボリューム』、そしてノイジーなギターサウンドをフィーチャーしたB面曲『アニティナ』において、スティーヴンとマーティンの2人は作曲者としてクレジットされている。

「こんな風にしたくないというのははっきりとあったけど、どんな曲になるのかは想像がつかなかった」マーティンは1988年のスピン誌のインタビューで、大ヒットとなった同曲についてこう語っている。「とにかく音を磨き過ぎたくなかった。荒いサウンドが欲しかったんだ」

『パンプ・アップ・ザ・ボリューム』はグラミー賞ベスト・ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス部門にノミネートされ、後年には『再会の街 / ブライトライツ・ビッグシティ』『アメリカン・サイコ』のサウンドトラックに収録された。同曲の破格の成功にもかかわらず、その後グループは解散。『99 Red Balloons: And 100 All-Time One-Hit Wonders』によると、解散の理由は「金銭面でのトラブル」と音楽性の相違だったとされている。

『パンプ・アップ・ザ・ボリューム』のリリース以降、ムースとキッド・コンゴ・パワーズの作品への参加を除き、ヤング兄弟は目立った音楽活動をしていなかった。

Translation by Masaaki Yoshida

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