ジェイソン・イズベルはほぼ間違いなく、彼と同世代の中で最も敬愛されているルーツロックのシンガー・ソングライターであると言えよう。それはハニーサックルのような甘やかな歌声と、比肩することなき才覚に富んだ詩的な歌詞によるところが大きい。

 36歳のイズベルは最新作でも、献身や過去の無謀さについて歌う。彼の出世作『Southeastern』に大成功をもたらしたおなじみの題材だ。しかし本作では、個人的な危機や贖罪のストーリーをより繊細で幅広い観点から語っている。その歌詞にはディティールが詰め込まれている。「The Life You Chose」で彼は歌う。“君のママの車にはジャックコーラ/君は『ベル・ジャー』を読んでいた”

 アラバマで育ったソングライターの新作は、やはり彼のトレードマークであるカントリー調のソフトロック。本作でイズベルは、現代の南部の日常をスナップショットふうに描き出していく。「Speed Trap Town」は、あまりにも小さな自分の故郷を見捨てる若者の物語。また陰鬱なブルース・ロック「Palmetto Rose」では、法体制に逆らうサウスカロライナ人が“南北戦争に関するデタラメな話”を語る。同曲でイズベルは、恥と誇りという相反する感情を持ちながら、何百年にも及ぶ国の歴史についてじっくりと考える。そして、まさにアメリカらしい結論に落ち着くのだ。“自分の自由意志に従って生きる/自分が満足するまで”。このような歌詞が書けるのは、アーティストがかつてないほど自信に満ちているからだ。ソングライティングの面では、まさに達人の域に達したと言えよう。

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