ニール・ヤングは40年以上にわたって環境問題に警鐘を鳴らしてきた。1970年、最初のアースデイの数カ月後にリリースされたアルバム『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』の表題曲で、“母なる自然が逃げ出すのを見ろ”と我々に警告していたヤング。2003年リリースの『グリーンデイル』でもそんなメッセージは失われることなく、「ビー・ザ・レイン」の中で“僕らは母なる地球を救わなければならない”と懇願していた。しかしこの『ザ・モンサント・イヤーズ』ほど、彼の主張が熱心に語られたアルバムはこれまでない。本作でヤングは、タイトルとなった巨大農薬メーカーに対して憤り、遺伝子組み換え作物に溢れた米国農業の未来を嘆いている。“ネブラスカの土地から/オハイオの土手まで/農家は自由に栽培できなくなるだろう/自分たちの望むものを”と歌うヤング。描かれるイメージはウディ・ガスリー的だが、正義の炎に燃えるロックンロール魂は、やはり彼ならではだ。

 本作はその発端から、“オーガニック”なこのアルバムにふさわしいものだった。昨年のファーム・エイドでヤングがジャムをしたのは、ウィリー・ネルソンの息子たちであるギタリストのマイカ、そしてシンガー兼ギタリストのルーカス。ルーカスはルーツ音楽バンド、プロミス・オブ・ザ・リアルのフロントマンでもある。その演奏が上手くいったため、ヤングはすぐにふたりをカリフォルニアに呼び出し、プロテスト・フォークをレコーディング。ヤングのかなりラフな基準から照らし合わせても、その演奏は緩めではある。

 しかしこれ以上、洗練された楽曲となっていたら、アルバムの意図を否定するものになっただろう。ヤングの歌詞はしばしば政治ブログのメッセージのようだ。「ア・ロック・スター・バックス・ア・コーヒー・ショップ」でヤングは、口笛のリフレインとともに思いのたけをぶちまける。“バーモントの住人たちが/遺伝子操作された食物を表示するように投票で決めた/何が入っているかを知るために/農場主が何を栽培しているかを/モンサントとスターバックスは/アメリカ保存食品製造業者協会を通して/バーモント州を訴えた/住人たちの願望を覆すために”。また、最高裁判所による2010年のシチズンズ・ユナイテッド判決が企業に人と同じ権利を与えてしまったことを嘆き(「ビッグ・ボックス」)、疑惑の残る“農薬と自閉症の関係について”といった意義ある音楽を作らず、ただ浅はかなラヴソングばかりを作っていると音楽業界を批判する(「ピープル・ウォント・トゥ・ヒア・アバウト・ラヴ」)。

 怒りが頂点に達した時でも、ヤングのパフォーマンスには温かみと美しさが存在する。アコースティックのバラード「ウルフ・ムーン」で思慮のない略奪に耐える土地を褒め称えるヤングの声は、錆びたヒンジのようにきしんでいる。まるで地球が辛い時を過ごしている古くからの友人で、ヤングはそんな地球を慰さめるべく、ビールでも一杯やろうかと誘っているかのようだ。彼の音楽の核心となっているのは、常にそんな誠実さだ。いかなる道をさまよおうとも彼に連れ添っていこうと思わせるのは、そのありのままの情熱のためなのだ。

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