ついにメサイア(救世主)がやって来た。2000年に、脂ののったR&Bの名盤『Voodoo』をリリースしたディアンジェロ。その後15年間もの間、世界中が続編を今か今かと待っていた。しかし本人はいたってのんきだ。本作収録の楽曲「シュガー・ダディー」で、喉を鳴らしながら彼は歌う。“雌ライオンの口から肉を取り去ることはできない/時にはゆっくりとやらなきゃダメなのさ”。ディアンジェロとそのバンドはアヴァン・ソウルの夢の宮殿を作り上げた。我々は56分にもわたり、この天国にどっぷり浸かることができる。

『ブラック・メサイア』の中では、トラブルマンのディアンジェロが、自らの問題を解決してゆく様子が描かれる。「バック・トゥ・ザ・フューチャー(Part I)」では、長期にわたる一時解雇までジョークにし(“俺がどんな状態でいるのか知りたいのなら/それが俺の腹周りのことでないことを祈ってるよ”)、「ザ・シャレード」では、行政への怒りを表したりもする(“話すチャンスが欲しかっただけ/それなのに、一方的にあらましを説明されただけ”)。ちなみに「1000デス」では、彼の相変わらず素晴らしいギター演奏も楽しめる。

「アナザー・ライフ」は、アルバムの最後を飾る一大叙事詩。プリンスの「アドア」やアル・グリーンの「ビウェア」に通じるディープ・ソウルとなっている。クエストラヴのドラムと、ディアンジェロ自身が演奏するトム・ベルふうのシタール、そしていつ果てることなく続く、最高に温かいファルセットで構成されている。このグルーヴにやみつきにならない人はいない。『ブラック・メサイア』に収録されたすべての楽しみを堪能するには、少なくとも15年はかかるだろう。

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