シルヴァーサン・ピックアップスによる見事な出来栄えの、実にエキサイティングなセカンド・アルバムは、負傷したクマの叫びや、怒ったヘビのシューシューという威嚇音、雄バチの暗く甘い羽ばたきの音など、ディストーションの七変化を見せる。「パニック・スウィッチ」は、ダーティで鬱屈したギターとともに始まり、鉄壁のように分厚いギターが奏でるコーラスへと急転換、錆びついた高音で歌い上げるブリッジへと発展するなど、シンガー兼ギタリストのブライアン・オーバートが、ファズのオーケストラをひとりで奏でる。ある時点で彼は、まるで苛立ったヘビのように、ニッキー・モニンガーのベースとクリストファー・グアンラオのドラムに、唸るような分厚い音の一撃を加える。このロサンゼルスの4人組は、彼らなりのスタイルを貫きつつも、とりわけスマッシング・パンプキンズのネオサイケデリックな波動や、UKのライドに代表される90年代オルタナティヴ・ロックの要素を引き継いでおり、大胆なまでにレトロ志向だ。2006年の『カーナヴァス』から成長を遂げた本作。重層的なハーモニーを用い、ディストーションが膨らんでいくように聴こえる。まだ課題は残されているが、彼らはファズで遊び、ノイズの中に美を見つける方法を知っている。

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