フライング・ロータスこと、スティーヴン・エリソンは自らのエレクトロニックな音風景の中に好んでジャズの要素を取り入れている。2012年リリースの『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』や、ベーシストの巨匠であり友人のサンダーキャットとともに手掛けたプロジェクトなどもそうだった。しかし通算5枚目となるフライング・ロータス名義のアルバムでは、ヒップホップがラップトップで作られる時代に見合った形で、最も大胆に“フュージョン”に挑戦した。このアルバムには、オビ=ワン・ケノービのような長老ハービー・ハンコックをはじめ、サックス奏者のカマシ・ワシントン、元マーズ・ヴォルタのドラマーのディーントニ・パークス、テレビ番組『メタロカリプス』のギタリストのブレンドン・スモールら、さまざまなジャンルのアウトローたちも参加している。

アルバムでは、エリソンの友人のスヌープ・ドッグやケンドリック・ラマー(エリソン自身もラッパーに扮する時に使うキャプテン・マーフィーの名前で参加)が、アストラル界(死によって肉体を抜け出た魂が漂う場所)や幽体離脱体験についてラップ調で語っている。ドラッグでハイになった体験としてではなく、このアルバムのテーマである“死生観”としてだ。しかしそれでも、このセッションは楽しい。ここにはスウィングがあり、ファンクの要素も入っている。あまりにテンポが速く、時には歌っているのが人かサイボーグかわからなくなるが、それもこのアルバムの大切な要素だ。かつてハービー・ハンコックのボスであった、マイルス・デイヴィスを驚かすような音楽を作るのが目的とエリソンは語る。マイルスほどの大物に挑むからには、気合いが入っていることがわかるだろう。

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