ゾンビ映画の金字塔『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』公開から50年

公開50周年を迎えた『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』

「バーバラ、奴らは君を狙ってる」ー 公開から50年が経った現在でもその輝きを失わない、ジョージ・A・ロメロによる低予算ホラームービーの金字塔を振り返る。

「あの作品によって、蘇った死人たちが殺戮を犯すというゾンビ映画の典型が確立された」

「奴らは死んでる、でも生きてるんだ」

ピッツバーグでプレミアが行われた映画は決して多くないだろう。

さらに言えば、10月の土曜日のマチネーの時間帯に、客の大半を子供たちが占めるピッツバーグの映画館でプレミア公開された映画など、ほぼ皆無に等しいだろう。当日フルトン・シアターに足を運んでいたホラー映画好きのキッズたちは、タイトルに「デッド」という言葉が付いたその作品には何かしらのモンスターが登場するのだろうと推測し、週末の暇つぶしには持ってこいだと考えていたに違いない。極めて限られた予算で制作されたそのモノクロ映画が、地元ピッツバーグで断続的ながら7ヶ月間かけて撮影されたという背景も、好奇心旺盛な彼らの興味を惹いた。制作者たちが地元でのプレミア公開を選んだのは、ホラームービーを愛する彼らにこそ観て欲しいと考えたからなのかもしれない。

魅力的な若い女性と鈍重な兄が、どことなく不吉な音楽をバックに墓地を歩き回るシーンを目にして、若き観衆は歓声と笑い声を上げたことだろう。ある人影が近づいてくる場面では、彼らはボリス・カーロフ風の声で「バーバラ、奴らは君を狙ってる」と一斉に叫んだに違いない。しかしその奇妙な人物が兄に噛みつき、バーバラが恐怖のあまり裸足で駆け出すと、客席は静まり始める。夢中で走り続けたバーバラが辿り着いた一軒家には、その他の登場人物たちが続々と集まってくる。その家はやがて包囲され、ゾンビたちは閉じ込められた人々に襲いかかろうとする。腹を空かせたゾンビたちが生きた人間を食べ始める頃には、客席の歓声はいつしかすすり泣きに変わっていた。土曜の午後のお楽しみは、気づけば正真正銘の悪夢と化していた。



Translated by Masaaki Yoshida

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