ローリングストーン誌が選ぶ、2016年ベストアルバム50枚

Christopher R. Weingarten, Jon Dolan, Jon Freeman, Brittany Spanos, Joseph Hudak, Mosi Reeves, Kory | 2016/12/11 16:00

| 2016年の顔となったアーティストたち 左からチャンス・ザ・ラッパー、デヴィッド・ボウイ、ビヨンセ(Photo by Jimmy King) |


15位 Lvl Up『リターン・トゥ・ラヴ』
(原題:Lvl Up, ’Return to Love’)


現代のインディーロックのシーンは、隆盛を極めた90年代の栄光を取り戻そうと躍起になっているように見える。しかし想像力と情熱に満ちたブルックリンのこの若きバンドは、シーンにおいて突出した存在感を誇っている。3作目となる本作で彼らは、美しくも複雑に絡み合うペイヴメントのギターサウンドと、ニュートラル・ミルク・ホテルやビルト・トゥ・スピルの叙情性を、20代半ばならではの無謀なまでの大胆さで結びつけてみせた。3人のソングライターを擁する彼らの音楽性は、異なる感性がぶつかり合うことで生まれるヒリヒリとした魅力に満ちている。しかしLvl Upのサウンドを決定づけているのは、楽曲に込められたスピリチュアルな渇望感だ。中でもハイライトとなるのは、友人が抱えるトラウマを眩いほどのカタルシスに昇華させようともがく『ペイン』だ。

14位 グリーン・デイ『レボリューション・レディオ』
(原題:Green Day, ’Revolution Radio’)


ベイエリアのパンクロッカーから国民的バンドへと変貌を遂げたグリーン・デイは、12作目となる本作でアメリカの現在に正面から向き合ってみせた。鮮烈なギターサウンドでこの国が抱える闇を照らし出す一方で、最終曲の『オーディナリー・ワールド』や、痛みを知って生まれる生の喜びを歌った『スティル・ブリージング』では、切実に心の平穏を求める。マイク・ダーントの弾けるようなベースラインと、トレ・クールのエネルギッシュなドラミングに支えられ、リーダーのビリー・ジョー・アームストロングは現代社会が抱える病と自身の内に潜む悪魔と向き合う。2000年代前半にかつてない高みに到達した彼らは、混沌とした2016年という時代を、ベテランならではの冷静な視点で切り取ってみせた。

13位 マレン・モリス『ヒーロー』
(原題:Maren Morris, ‘Hero’)


マレン・モリスのデビューアルバムは、今日における広意義な解釈をもってしても、カントリーと枠には収まりきらないだろう。しかしなお、生来の表現力とテキサスで育まれた大らかな感性がにじみ出る『ヒーロー』は、ポップ・カントリーがチャートを賑わした2016年において突出した成功を収めた。本作ではシャキーラやキース・アーバン等との仕事で知られるBusbeeが一部プロデュースを担当し、セクシーな『シュガー』、どこか生意気な『80s・メルセデス』、そして彼女の名前を一気に知らしめた『マイ・チャーチ』といったヒット曲によって、彼女はクロスオーヴァーな新世代アーティストの代表的存在となった。また本作で、彼女は華々しいポップカルチャーの世界とありのままの自分を結びつけることに成功している。豪遊生活に対する皮肉を込めた『リッチ』ではディディを名指しし、コーラス部では「シット」という言葉が思わず口をついて出たという。嫌味になるどころか曲が一層印象深くなっているのは、そこに彼女の素顔がにじみ出ているからだ。J.H.

12位 ポール・サイモン『ストレンジャー・トゥ・ストレンジャー』
(原題:Paul Simon, ’Stranger to Stranger’)


ポール・サイモンは13作目となる本作のテーマを、自身がこれまで追求してきた憂いを帯びたブルースとロックンロール特有のメロディを、斬新なサウンドで生まれ変わらせることだったとしている。同時に、ジャンルを軽々と横断してみせる生粋のアウトサイダーが産み出したこれらの楽曲は、図らずも2016年を覆った不穏なムードとシンクロする。狼人間が列をなして行進する冒頭曲『ザ・ウァーウルフ』(無知と傲慢さ、それがこの国の抱える課題 / ベガスで大博打、億万長者の登竜門」)、銃撃事件の被害者たちに思いを馳せる『ザ・リヴァーバンク』、持たざる者の葛藤と富を求める者の強欲を歌った『リストバンド』等は、現代に生きる人々が漠然と抱える不安を代弁するかのようだ。その一方で、「光の洪水」と形容される愛、そして揺らめいては弾ける素晴らしくも奇妙なサウンドは、人々の胸に優しく響き渡る。

11位 ソランジュ『ア・シート・アット・ザ・テーブル』
(原題:Solange, ’A Seat at the Table’)


ヴィンテージ・ソウルとインディー・ロックを見事に融合させた『ア・シート・アット・ザ・テーブル』は、痛みを乗り越えて立ち上がる人々へのラヴレターであり、現代のアメリカに生きる黒人女性としてのマニフェストだ。ドリーミィなシンセと抑制されたドラムに支えられ、ノウルズ家の末娘はネオ・ソウル界の頂点へと突き進みながらも、『ドント・タッチ・マイ・ヘアー』では「これは私たち全員の問題」であることを諭してみせる。ケリー・ローランド、Q・ティップ、マスター・P、リル・ウェイン、そして彼女の両親とのコラボレーションによって生まれたスムーズでエクスペリメンタルなモダン・ソウルのマスターピースは、今日のアメリカに漂う不穏なムードを優しく包み込んでみせる。 B.S.
Translation by Masaaki Yoshida

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