Photo: (Illustration by Brittany Falussy)

90年代のレジェンドや未来志向のグラインドコア・バンドなど、中身の濃い1年

メタルは今年成長した以上にジャンルの幅を大きく広げた。バロネスは聖歌のような勝ち誇った態度でかつてのグルーヴを取り戻し、デフヘヴンやボス・ドゥ・ナージュなどの「ブラックゲイズ」系バンドは陶酔状態と苦痛を楽しみ、アイアン・メイデンは過去最長のエピックを書き上げ、フェイス・ノー・モアは17年ぶりに3部構成のハーモニーで復活した。
メタルにとって中身の濃い1年となった2015年を総括しよう。

20位 Cloud Rat 『Qliphoth』


ミシガンの荒くれ者クラウド・ラットは、激怒をはるかに超える感情のための余力を確保するダイナミックで映画みたいな感覚を自分たちの短気な性質に与える代わりに、残忍性や速さを求めてグラインドコア界における果てしないせめぎ合いに背を向けた。電子楽器技術に優れた新星ブランドン・ヒルが叩き出す、不明瞭な4ADのヴォーカルやぼんやりしたシューゲイズ系のテクスチャー、のろのろしたスタイルのポスト・ロック、キーキーという音や金切り声そして轟音といったあらゆるサウンドが爆音を挟み込み、もしくは支えている。言ってみれば、彼らの乱暴な演奏はナパーム・デスやピッグ・デストロイヤーから機械的な精度が欠けた感じで、パンクやハードコア寄りである。より語りやすい人間味のある混乱したリズムは、ヴォーカルのマディソン・マーシャルが偏屈者や王、暴君に小銃の銃床部や家畜銃を向ける殺人事件のファンタジー小説を大声で歌うのに適している。by C.W.

19位 Ghost(ゴーストB.C.) 『Meliora』


ブラック・サバスのマイナーキーのサビやディープ・パープルのおおげさなキーボード、ブルー・オイスター・カルトのとても美しい旋律の暴走などの霊に取り憑かれたゴーストB.C.は、映画『エクソシスト』が興行収入で大成功し、玩具メーカーのパーカー・ブラザーズ社がウィジャ・ボードを大流行させた邪悪な70年代を回想した演劇のワンシーンのようである。ゴーストB.C.のサード・アルバム『Meliora』は2013年にリリースされたカーニバル風のポップなアルバム『インフェスティスマム』よりもうるさく飾り気がないが、それでも邪悪な大衆のニーズを満たすものになっている。猛烈な勢いのリフは、柔らかいヴォーカルのメロディとフォークギターのアルペジオ奏法、合唱の歌声、軽快な弦楽器の音色によって相殺されている。温もりのあるサウンドが魅力的なので、聴き手は「俺たちは地獄と炎に包まれた世界の狭間に立っている/不幸なカップルがあらゆる呼び名を持つ獣と心を通わせる(We’re standing here by the abyss and the world is in flames/Two star-crossed lovers reaching out to the beast with many names.)」といった陳腐でオカルト風にも感じられる歌詞を見過ごしてしまいそうになる。そんな不思議な要素があるため、ゴーストB.C.の闇への献身はキング・ダイアモンドというよりキッスに近いと言えるが、音楽は悪魔っぽい特徴を取り払ったとしても十分記憶に残るほど力強いものである。by J.W.

Translation by Deluca

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