オアシス、世界を制した1996年の超貴重インタビュー「あの頃の俺らはマジで最高だった」

リアム・ギャラガーとノエル・ギャラガー(Photo by Nathaniel Goldberg)

 
1994年9月14日、渋谷クラブクアトロで日本での初ライブを行なったオアシス。伝説的一夜の30周年を記念して、米ローリングストーン誌による1996年の大変貴重なカバーストーリーをお届けする。2ndアルバム『(What’s the Story) Morning Glory?』で歴史的セールスを叩き出し、キャリアの頂点を極めた時期だけに、ギャラガー兄弟の減らず口も絶好調。奔放な発言の数々を心ゆくまで堪能してほしい。

【動画】1994年9月14日、初来日公演のライブ映像


自由を手に入れたロックスター

「俺は女に騙された。先月だけで2回もあったよ。彼女らは俺との“カラミ”のネタを雑誌に売って金を稼いだんだ。まあ、それもありだろうな。何せ俺は事を終えて、そのまま立ち去ったから。俺も彼女たちを騙したってわけだ。だから1対1の引き分けってところさ」(リアム・ギャラガー)

リアムは、イギリスあるいは男性を代表するに相応しい存在とは言えない。彼は自分のことを話すのが大好きだ。中でも、オアシスの23歳(当時)のリードシンガーは、失礼で馬鹿げたことを言ったり実践しているときが最も幸せらしい。要するに、彼はほとんど常にゴキゲンで人生を謳歌している。


ローリングストーン誌 1996年5月2日発売号の表紙

今の状況がいい例だ。ここはイギリス版のグラミー賞にあたるブリット・アワードの会場で、ギャラガーはステージ上にいる。バンドの2枚目のアルバム『(What’s the Story) Morning Glory?』が最優秀アルバムに選ばれ、記念に贈られたトロフィーを手にした彼は、腰をかがめてそれを肛門に刺すふりをしている。しばらくしてから、彼はゆっくりと演壇に戻ってこう言った。「ファック」。

そして彼は、暖かい室内には似つかわしくない冬用コートのポケットに手を深く突っ込んでこう言い放つ。「俺たちをこのステージから引きずり下ろせるほどタフなやつがいるなら、今すぐ上がってこい」。会場にはブラー、レディオヘッド、スーパーグラス、パルプといった、同じく一単語のイギリスのバンドが勢揃いしているが、誰も彼の挑発に応じようとはしない。イングランドはマンチェスター出身のこの労働者階級の5人組が、イギリスの頂点に立つ存在であることがこの瞬間に証明された。彼らよりもビッグで粗野なバンドは、国中どこを探しても見つからない。


1996年のブリット・アワード(2月19日開催)、オアシスの受賞シーン。最優秀ブリティッシュ・ビデオ賞を受け取る場面ではプレゼンターのマイケル・ハッチェンス(INXS)に対しノエルが悪態をつき(映像冒頭、詳しくは後述)、最優秀ブリティッシュ・アルバム賞の受賞スピーチ(01:45〜)では当時対立していたブラーの「Parklife」を馬鹿にしながら歌唱。その後、リアムがトロフィーを肛門に刺すふりをする(03:50〜)

ギャラガーとオアシスの他のメンバーはステージを降り、祝杯を上げるべく軽い足取りでテーブルへと戻っていく。パイントのラガービールを片手に先頭を切るのは、リアムよりも5歳年上の兄、ノエル・ギャラガーだ。その後ろには、ギタリストのポール “ボーンヘッド” アーサーズ、ベーシストのポール・マッギーガン、そして昨年の『Morning Glory』のレコーディング開始直前に、結成メンバーのトニー・マッキャロルに代わって加入したドラマーのアラン・ホワイトが続く。

その夜の焦点は紛れもなく『Morning Glory』だった。シングル「Wonderwall」のヒットに後押しされる形で、このアルバムは今世界中で脚光を浴びている。しかし、オアシスが注目されている理由はもうひとつある。それはギャラガー兄弟に象徴される、バンドの不遜ぶりだ。絶え間ない薬物使用、喧嘩、そしてメディアを挑発する過激な発言の数々で知られるオアシスは、もはやバンドそのものが巡回エンターテインメントとなっている。

「俺たちは人をイライラさせるのが好きなんだ」とノエルは平然と言い放つ。「マンチェスター生まれのやつはみんなそうさ。人をムカつかせるのが好きなんだよ」。


本インタビューのあと、1996年8月10日・11日には伝説の野外コンサート・ネブワース公演が開催された。公演初日(DAY1)の模様が完全ノーカットで劇場上映される『オアシス:ライヴ・アット・ネブワース 1996.8.10』が、10月18日より東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

派手なヘッドラインの影に隠れている感さえあるが、ブリティッシュ・インベイジョンの影響を受けたオアシスの2枚のアルバムは問答無用にキャッチーだ。お世辞にもオリジナリティがあるとは言い難いが、その中毒性は誰も否定できない。また、1994年のデビュー作『Definitely Maybe』が単なる虚勢だったのに対し、『Morning Glory』のサウンドはより柔らかく厚みがある。最初のアルバムは始終ロックンロールに徹していたが、2作目の楽曲群は穏やかな流れを生み出している。以前はジョニー・ロットンのような嘲笑をトレードマークにしていたリアムも、今は歌っている。

「最初のアルバムが出た後でも、リアムが『Wonderwall』をあんなふうに歌えるとは思ってなかった」とノエルは言う。「『Morning Glory』であんな演奏ができるなんて、俺たち自身も思っていなかった。できたらいいなとは思ってたけど、確信はまるでなかった。最初のアルバムの曲は全部逃避についてなんだ。マンチェスターのクソみたいで退屈な生活から抜け出すことさ。あれはバンドで有名になるっていう夢についてのアルバムだった。それに対して、2枚目は実際にポップスターになった俺たち自身のことなんだよ」。

ギャラガー兄弟にとって、ロックスターであることの最大のメリットは自由だ。人生で初めて、彼らは欲しいものを欲しいときに買える自由を手に入れた。同時に、気の向くままに好きなだけ馬鹿げたことをする自由も手に入れた。

「俺たちは酒を浴びるほど飲み、グルーピーと寝て、ドラッグをやりまくってるって言われてる」。最近、ボディガードを雇うという究極のロックスター的行動をとったノエルは言う。「誰かを陥れようとする輩はいつだっているんだよ」。

オアシスは実際に酒を浴びるほど飲み、グルーピーと寝て、ドラッグをやりまくっているのだろうか? ノエルは背もたれに身を預けて、満足げな笑みを浮かべる。

Translated by Masaaki Yoshida

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