世界中が歌詞に共感、マーク・アンバーが語るコールドプレイへの憧れと音楽が持つ力

Photo by Ryan Falcoa

 
“君と僕は一緒にいるべき、冷たいアイスティーと暖かい天気のように”と歌われるシングル「Belong Together」で、ブレイク中のマーク・アンバー(Mark Ambor)。2024年2月のリリース以来、同曲は、SpotifyグローバルチャートでTop50にランクインし、月間リスナーは2000万人超え。不確かで暗雲立ち込める時代に、突如として舞い降りた愛の伝道師。笑顔が眩しいシンガー・ソングライターはジェイソン・ムラーズの再来? それともコールドプレイ級のビッグスターの到来なのか。

ニューヨークの州立公園の名が冠されたデビューアルバム『Rockwood』には、フォーク調アンセムが並び、まるでキャンプ場で焚き火を囲みながら、皆で口ずさんでいるかのような情景が脳裏に浮かぶ。アルバムのリリースに先駆けて、全米のラジオ局を巡りミニライブに勤しむ彼をリモートでキャッチ。日本初のインタビューを敢行した。




「Belong Together」が生まれるまで

ーコロナ禍に自作曲を発表したのが、本格的に音楽を始めた、そもそものきっかけだったそうですね。

マーク:そうなんだ、曲を書き始めたのは大学に入った頃で、本気で取り組むようになったのがコロナ禍ぐらい。元々、幼い頃から母親に連れられてピアノのレッスンは受けていたけど、でも歌ったことはなくて……人前で歌うのは、なんだか照れ臭くて。でも、ある時、たまたまピアノの前に座って、自分で曲を書いて歌ってみたんだ。そしたら自分でも「けっこういいんじゃない?」と思える出来だったから、両親も参加するグループチャットに「この曲どう思う?」ってアップしたんだ。そしたら数時間後に母親から返事が来て、「パパもママも大好きよ。何て言うのこのアーティスト?」って、僕が歌ってるとは夢にも思わなかったみたいで。その時から本気で曲作りをしようと思ったんだ。作曲はもちろん、プロデュースや演奏に関しても、少しずつ腕を磨いていった。

ー人前で歌うのが、すごく自然で、天職のように思えるだけに意外ですね。

マーク:嬉しいな、ありがとう(笑)。でも本当にそれがきっかけで、それ以来、必死で音楽に取り組んできたんだ。コネチカット州の大学に入学はしたけど、でも、ほとんど行かないで、音楽への情熱の方がどんどん高まっていった。2020年の卒業のタイミングで両親に打ち明けたんだ。「これから半年間、音楽だけに打ち込んでみたい、挑戦してみたい」って。そしたらコロナ禍になって、自作曲を発表していくうちにSNSやTikTokで話題になったというわけなんだ。



ーこれまでにどのようなアーティストの影響を受けてきましたか?

マーク:コールドプレイがとにかく大好き。彼らの大ファンなんだ。特に初期のアルバムだよね。あとザ・ルミニアーズやマムフォード&サンズも大好きだし、ノア・カーン、ザック・ブライアンなども。ジャンル云々より、心に訴えるものがある音楽かな、僕が愛しているのは。ポップミュージックを広くたくさん聴いてきたし、今言ったような人たちやヴァンス・ジョイのようなフォークミュージックの影響も受けてきた。


マークのお気に入り曲をまとめたプレイリスト

ー「Belong Together」で多くの人に名を知られるようになりました。この曲の成功でプロとしてやっていく自信や覚悟がいっそう強くなったのでは?

マーク:そうなんだ。実際この曲のおかげで自信がついたし、音楽家としてやっていけるんじゃないかって、考えると嬉しくなるよ。以前に出した「Good To Be」(アルバムにも収録)に対するリアクションも、それまでに発表した曲より全然良かったんだけど、でもこの「Belong Together」に対しては、更にビックリするほどの反響で、とにかくすごく嬉しい状況なんだ。ニューヨークの自分のベッドルームでひとりで作った曲が、こんなふうに世界中に広がるなんて。さまざまな人々、異なる文化をもった人々に受け入れられている事実に、すごく感動しているし、やりがいを感じている。

ーこの曲が、これほど広く多くの人々に受け入れられた理由を、どんなふうに自己分析していますか?

マーク:上手くは言えないけれど、“君と僕は一緒にいるべき”という歌詞はけっこう直接的だから、人々がすぐに反応して共感してもらえたんじゃないのかな。フィールグッドな曲だし、共同体意識や繋がりを感じて、温かい気持ちに包まれる。でも本当のところは、よく分からないんだ。改めて「なぜ?」って考えると、さまざまな人生を歩んできた人々が、人生のどこかで同じような体験をしていて、共感してもらえたんじゃないのかな。



ーこの曲が生まれた背景というのは?

マーク:この曲も含めたアルバム『Rockwood』の収録曲の全てが、僕の自宅のベッドルームで書かれている。ギターを弾きながら、スマホでボイスメモを録りながら作っていった。窓から外を眺めながら、大抵はメロディを口ずさんでいるうちに、なんとなく浮かんだフレーズや言葉を繋いで曲にするんだ。「Belong Together」も、まさにそんな感じで生まれた曲だった。導入部のフレーズが浮かんで、そこから曲全体を作っていった。

ー「Belong Together」には、“君と僕は一緒にいるべき、冷たいアイスティーと暖かい天気のように”(Belong Together like Cold Iced Tea and Warmer Weather)という印象的なフレーズがあります。どのように生まれたものですか?

マーク:アハハ、実はあのフレーズも、たまたま口から飛び出したもの。全然何も考えてなくて、ギターを弾きながらメロディを歌っていたら、口を突いて出てきたんだ。喉を潤す冷たいアイスティーと夏の暑い日の相性って最高じゃないかと思うし、フィールグッドな曲調にもピッタリだと思ったんだ。でも、なぜこの組み合わせを思いついたのかは、よく分からないんだ(笑)。

ーこの曲をはじめ、マークの曲からはリスナーと繋がりたいという気持ちのみならず、リスナーの全員を繋げたいという気持ちが伝わってきます。大きな共同体を創造したいというような……。

マーク:それこそ僕が常に心掛けていることだよ。さっきも言ったコールドプレイが好きなのも、そういうところ。彼らのライブを観ると、一体感を強烈に感じさせられる。大きな共同体の一部になったかのような安心感かな。そういったアーティストに僕はインスパイアされてきたし、僕もそういうアーティストになって、人々をインスパイアしたいんだ。音楽には人々をフィールグッドにする力が備わっている。きっと世界であまり良いことが起こっていないので、求めるのかもしれないけれど、他の人とひとつになって一体感を味わいたい。少なくとも僕自身はそう感じているんだ。



ー「Our Way」のミュージックビデオでは、実際そんなふうにファンと一体化している姿を観ることができます。あのビデオは、どこで、どんなふうに撮影されたのですか?

マーク:オランダのアムステルダムなんだ。ツアーの最終日に撮影した。その数日前に思いついて「次のシングルのビデオ撮影をするから、会場の外に出てきてくれない?」ってファンに声を掛けたら、みんなが喜んで協力してくれた。2テイク撮ったのかな。その一つがあのMVなんだ。

ーファンのみんなも最高に楽しそう。

マーク:凄く自然に、ありのままの姿が撮れているよね。そこが大好き。凄く気に入っているんだ。

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