RIZEが語る再始動の理由、ロック・バンドの「奇跡」を信じる男たち

RIZE:左からJESSE(Vo, Gt)、KenKen(Ba, Vo)、Rio(サポート・ギタリスト)、金子ノブアキ(Dr)(Photo by cherry chill will.)

いよいよRIZEが再始動を果たす。『RIZE TOUR 2024“SOLU”』と銘打たれた全国7カ所を巡るツアーが、この6月から7月にかけて行なわれるのだ。ただ、通常こうしたニュースには大掛かりな活動計画や劇的な展開がつきものだが、このバンドの場合は相変わらず戦略めいたものとは無縁なままであるようだ。そんな彼らのリアルな現在を探ろうと、4月半ばの某日にインタビューに臨んだのだが、当日になってJESSE(Vo, Gt)が急用のため欠席となり、彼とは機会を改めて話をすることになった。この日、取材現場に現れたのは金子ノブアキ(Dr)、KenKen(Ba, Vo)、そしてサポート・ギタリストのRioだった。各々が多忙な毎日を過ごしているだけに、ツアーに向けてメンバー全員でリハーサルに臨める機会も限られている中、この日の彼らはJESSE不在という変則的状況でスタジオに入っていたのだという。

【写真を見る】再始動するRIZE

―スタジオ帰りだそうですね?

KenKen:そう。Rioと一緒にRIZEをやるのは6年ぶりってことになるのかな。武道館(2017年12月20日)以来やっていなくて。その直後、下北沢CLUB251のPA担当だった方が亡くなって、その追悼ライブで3曲ぐらいやったことがあったけど、それが実質的に最後だった。まあ、RIZEと関係なく一緒にやることはあったんだけど。

Rio:俺、あの武道館の時以来使ってなかった機材を引っ張り出してみたら、全部音が出なくなってた(笑)。ずっと放置してたから、完全に錆び付いてたのかも。

KenKen:だけど心は錆び付いてなかった、みたいな(笑)。実は昨年末にRioは不在のトリオ編成で、渋谷CLUB ASIAでファンクラブ向けのライブやったんだけど、あの時も武道館から6年経ってるという感覚ではなかったね。体感的には2週間ぶりみたいな感じで、やっぱりこのバンドには奇跡的なものが宿ってんだなって感じさせられた。普通はすごく時間をかけてリハーサルをしたうえで戻ってくるものなんだろうけど、細かいことは忘れていても、勢いとかグルーヴはまったく変わってなくて。ホントに家族が久々に集まったみたいな感じだったな。

―実家にみんな勢揃い、みたいな。

KenKen:うん。それこそJESSEにとっても、The BONEZがここまで大きなものになってきたことで、逆にRIZEについては実家感が増したんじゃないかな。

金子ノブアキ:それはあるかもね。しかもそこで妙なギャップはまるで感じないし、今のほうがずっといい状態にある。しかもあれから6年以上も経ってるという時間経過の長さはまったく感じなかったし、そこはホントに不思議だった。他ではこうはならないだろうな、と思う。集まって、ごく当たり前のように始まって、そこですぐさま爆発するものがあるというか。

KenKen:何年も自転車に乗らずにいた人が、久々に乗ってもちゃんと乗りこなせるのと同じようなことなのかもしれない。

Rio:自分でも曲を覚えてないんじゃないかと思っていたけど、意外とちゃんと記憶の中から出てきたしね。きょうのリハでも細かい確認とかはせず、ホントにフラットな感じで久々に音を出す感じだったけど「あれ? 意外にこんな細かいところまで憶えてる」みたいな面白さがあったし、やっぱり身体に染みついてるんだなって思わされた。

KenKen:Rioは途中からチームに入って来てるから、感覚的に俺らとは違うところもあるのかもしれないけど、たとえば俺の記憶が飛んでる箇所については他の誰かが憶えてくれてたりもする。たまに全員が忘れてるところがあったりもするんだけど(笑)。俺の場合、この5年ほどロック・バンドとしての活動をしてこなかったから、久々にこんなに大きな音を出すっていう新鮮さもあったし、これぐらいの音を出さないとこんなふうにならないよな、と再確認させられた部分もあった。しかもやっぱり、それがすごく楽しい。

金子ノブアキ:RIZEに戻ってくると、もうただただRIZEになるしかないというか。それはCLUB ASIAでやった時にも思ったんだけど、なんだか全員が前傾姿勢でつんのめってる感じで、すごくパンクだった。昔からよく「ミクスチャー・ロックって精神性としてはパンクなんだよな」みたいな話をしてたけど、それを改めて感じたし、90年代初頭の路地裏のライブハウスの空気がそのまま真空パックされて残されてたという感覚だった。

KenKen:うん。だからこの音、この空気を出せるのは俺らしかいないんじゃないかっていう自負がいっそう強まってるし、みんな“素”のままなんだよ。それこそJESSEについても、The BONEZでの彼はある意味エンターテイナーで、すごく成熟してるのを感じるんだけど、ここではアメスク時代のやんちゃな彼に戻ってるような気がする(笑)。

―若い頃の遅刻癖とかが戻っていなければいいんですが(笑)。

金子ノブアキ:それはもう大丈夫だと思う。最近は遅れる時でもちゃんと連絡をくれてるし(笑)。でも確かに、俺自身もこの場にいる時は昔に戻っちゃってるところがあるかな。

KenKen:そういう感覚が初めて今回、俺にもわかったのかも。実は今回こうしてRIZEを再始動させるにあたっては、あっくんに3回も説得されてるのね。つまり2回断ってるということなんだけど(笑)。ブルーノートでSHAGのライブをやってる時に通ってくれて。

金子ノブアキ:打ち上げの席で説得してましたね。SUGIZOさんはじめ、メンバーの皆さんには邪魔だっただろうと思いますけど(笑)。

KenKen:俺はRIZEに入るよりも前にSUGIZOさんとバンドをやってたし、それも面白い流れだよね。そうやっていろんな流れがあって、2周目みたいになってきたところで、このバンドが存在してる奇跡みたいなものを俺自身がやっと感じられるようになってきたというか。それまではやっぱり、どうしてもJESSEとあっくんが始めたものだっていう意識が強かったから。だけど今回はそのあっくんが何度も口説きに来てくれて、すごくフラットな気持ちで戻って来られた。俺としてはすごくそれが大きくて。

―なるほど。ところでいちばん肝心なところでもあるんですが、何故このタイミングでの再始動になったんでしょうか?

金子ノブアキ:いろんな事情があるんですよ。それこそ執行猶予の件もあれば、コロナ渦もあったわけで。The BONEZの10周年というのもあったし。だからこのタイミングを狙ってたというわけじゃなく、最速でやれるのがこの時期だったというのが本当のところで。昨年末にファンクラブ限定のライブをやったのは、設立したのはいいけどずっと何もやれてなかったからなんですよ。みんなをずっと待たせっぱなしだから、そろそろ何かやらないとマズいだろう、と。そのうえで、ちゃんと焦らずに、誰にも迷惑をかけず、きちんとRIZEをやれる最速のタイミングということで、この時期になった。The BONEZの幕張(4月6日に実施された幕張メッセイベントホール公演)が終わってからであるべきだとも思ったし、ここなら誰もが納得できるだろう、と。

KenKen:コロナについてもすごくいろんな意見があったはずだしね。ただ、俺としては、お客さんも含めて、誰かが我慢を強いられるような状況だったらロック・バンドなんてできないと思ってたから。俺らが我慢してお客さんが好き勝手できるならいいけど、その逆は絶対無理だと思ってた。ロック・バンドがお客さんに対して唯一言えるのは「お好きにどうぞ」って言葉だけだと思うしね。だから俺自身もすごく考えたけど、ロック・バンドを自分がもう一度やるとすれば、それはRIZEしかないと思ってた。ただ、その気持ちになるまでには時間も必要だったから、あっくんからの申し出を2回も断ることにはなったんだけど。


金子ノブアキ(Dr)(Photo by cherry chill will.)

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE