RIZEが語る再始動の理由、ロック・バンドの「奇跡」を信じる男たち

JESSEが語る、RIZEの核(コア)

3人との賑やかな会話から2日後、JESSEと話をする機会を得た。この日に4人が集合することができたならば全員同席でのインタビューも可能だったわけだが、それが不可能だったこと自体が彼らの多忙さ、RIZEが全員集合する機会の稀有さを実感させる。そしてJESSEとの会話はいつも突等な話題からスタートする。この日はTシャツの話だった。彼は、RIZEの新しいプロモーション写真の撮影の際に、THE MAD CUPSULE MARKETSのTシャツ着用で臨んだのだという。

―そのTシャツを選んだのには、何か理由があったんですか?

JESSE:理由ってほどのものではないんだけど、俺、初めて買ったバンドTシャツがヘルメット(HELMET)のやつだったのね。今回の撮影ではそれかKORN、パンテラ(PANTERA)、リンプ・ビズキット(LIMP BIZKIT)、シルヴァーチェアー(SILVERCHAIR)あたりのうちどれかを着ようって考えてたんだけど、そんな候補の中にいつもかならず入れてるのがTHE MAD CUPSULE MARKETSのTシャツだった。結局、撮影現場でみんなの着てるものの色味とかを見たうえでそれを選んで、3人でパッと並んでみた時に「これ、完全にMADじゃん!」と思った(笑)。俺、メンバーの誰が好きとかじゃなくて、バンドとしてのMADが好きだったんだよね。カート・コバーンじゃなくてニルヴァーナが好きだったのと同じように。で、そういう感覚が当て嵌まるのがRIZEなんじゃないかなって思ったんだ。あのTシャツを着てる写真を見ただけで「おっ、今もRIZEは絶滅危惧種のバンドでいられてるんだな」というのが伝わるんじゃないかと思えたし(笑)。

実際ね、楽しいことばかりじゃなくてめんどくさい部分もあるんですよ、RIZEには。どんなジャンルだろうと、家族や友達と仕事することの難しさというのはあると思うけど、ある意味それの究極形でもあるから。友達というかファミリーで、やりたいからやるっていうのは間違いないんだけど、そこでビジネスとしても成り立ってないといけない。子供の頃は、そういうのを全部切り捨ててたというか無視してたけど、今はそういうわけにもいかない。それこそ自分の場合は逮捕されたこともあったわけで、それによってどれくらいの損失が生じたのかとか、そういうことも意識しないわけにはいかないからね。そういう部分に対処していくことも、俺は自分が成長していくにあたってめちゃくちゃ必要なことだと思ってたから。もちろんRIZEの活動は早かれ遅かれ始めるべきだと思ってたし、それをやるってことになると、RIZEだからこそビジネスライクじゃないところでやりたいというのがある。そこがある意味、俺のRIZEに対してのいちばんのワガママってことになるかな。そこを失くしちゃったら、また何かがおかしくなるっていうか。本当に特殊な成り立ちをしてるバンドだからね。だけど、それこそアー写を撮るだけでワクワクさせられたりもするし。

―The BONEZも決してビジネスライクなバンドではないはずです。しかしRIZEとはまたどこかが違うわけなんですね?

JESSE:まったく違うね。自分でもようやくThe BONEZとRIZEの違うところがきっぱりと見えてきたからこそ、こうしてRIZEもできると思ってるし、両方を同時進行できると思ってるわけなんだけど。The BONEZには、ホントにいまだに中高生の頃のバンドブーム当時に夢見た夢を一つづつ叶えてるバンドだし、ずっと思春期、みたいな(笑)。たとえば、あんなにすげえエモーショナルなリアル・ミュージックをやっていたPay money To my Painですら、Kが亡くなったことで、ZEPP TOKYOのステージを踏む寸前で夢が止まってしまった。ところがThe BONEZはZEPP TOURをソールドアウトにできていて、そろそろThe BONEZの歴史のほうがP.T.Pよりも長くなりつつある。だけど今もなお夢の途中にいるバンドなんだ。もちろんビジネスとしても成立してるわけだけど、あくまでインディペンデントだしね。物販をどれくらい作って原価率をどれくらいまで抑えるかとか、キャパ何人の会場でツアーを廻るべきかとか、そういうこともメンバー全員ですげえ考える。そこでRIZEはまたちょっと違っていて、ホントに雷が鳴る時ぐらいイレギュラーな時にしか集まらないから、計画的な話なんか無理じゃん? ただ、絶対という言葉はなるべく使わないように意識してるけど、俺がRIZEを辞めることは絶対にないな、生きてる間は。

―続けるとか止めるという次元のものではないってことですね? The BONEZが続いていくものだとすれば、RIZEは発生するものと言うべきなのかもしれません。それこそ落雷みたいに。

JESSE:ホントにそうだね。それこそ俺たち、「RIZE IS BACK」とか言っておきながらまたすぐにどっかに行っちゃってたじゃん? 武道館をやって、すぐにいなくなってしまった。そこで今回の再始動は、そもそもRIZERのためだけに始めたものだった。俺たちのファンクラブであるRIZER’S CLUBに入ってる人たちのためだけに。そんな中、逮捕とかもあって、どんどんRIZEは動けなくなっていったけど、それでも残ってくれるRIZERたちがいてくれた。情報更新がずっと何年もないのにも拘わらず、それでも「そういうところもRIZEっぽいよね?」って言ってくれてる子たちがいてくれた。それぐらいRIZEは突発的に動くバンドだからさ。そこを理解してくれてる人たちには、感謝の気持ちしかないよね。それでまずCLUB ASIAでのライブをやることにしたし、正直、その後もしばらくはその繰り返しでいいんじゃないかと思ってた。つまりリリースも物販もRIZER’S CLUB限定でいいんじゃないかって。今までいてくれたRIZERに感謝したかったし、もちろんそこで新たにジョインしたいっていう人がいれば大歓迎だけど、当面は何もかもそこだけ限定でもいいんじゃないかって思ってた。当然そこで「それは勿体ないじゃん。もっと広く出ていくべきだよ」という声も出てくるけど、俺はべつに新しいファンを増やすべきところでもないんじゃないかなと思ってたし、それでも観に来て「なんだよこれ、すげえ!」みたいになった人たちはファミリーに入ってくれればいい。そこで広げることとかを目的にしちゃうと、また何かが壊れかねない。それがわかってるからね。だからホントに「RIZERがいるからこそRIZEが成り立ってる」ということへの感謝の気持ちのもとで始めることにしたというか。ただ、いざやり始めれば、あれもやろうこれもやろうって話にはなってくるんだけどさ。それはその都度、面白いと思えることがあればやっていけばいいかな、と。


JESSE(Vo, Gt)(Photo by cherry chill will.)

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