CHAIはなぜ解散を選んだ? ラストライブから考える「NEOかわいいをフォーエバー」の真意

4人が守ろうとしたもの、最後に伝えてくれたこと

「CHAI」「NEOかわいい」とは、概念だった。ステージ上でも、Instagramやメディアでも、メンバーたちはそう表現している。

「バンド」というものは、一人の人間が持っている思想を超越し、もっと大きな思想が確立した世界を立ち上がらせることができる。CHAIが立ち上がらせていた世界とは、日常の中で心ない言葉を浴びせられても、自身に劣等感を抱いても、ここに入れば心を守ってもらえるようなセーフゾーン。世の中で「かわいい」「かっこいい」「正解」とされるものから外れたものもすべて肯定してくれるような、否定をなくし肯定の範囲を広げた世界。ラストライブでユウキが言った言葉を借りると、「自分を愛することは難しいことじゃない」と気づかせてくれる世界。自由で無敵で愛が溢れている心の行き場所、それが「CHAI」の概念だった。

そんな概念を壊さないために4人はここで潔く解散を選んだのだ、と私はラストライブを見て確信した。CHAIの活動が、それぞれの「なりたい自分」を奪ってしまっているのであれば、「NEOかわいい」のメッセージを説得力もって伝えることはできなくなるだろう。メンバー同士で何かを強いることや、自分がなりたい方向に誰かを付き合わせることは、「NEOかわいい」の考えに反する。そんな状態で、「CHAI」という概念が立ち上がるようなバンドマジックは起こせない。そもそも、自分の生き方に自主性を持って、自分が決めたことに愛を持つことで人生は好転すると教えてくれるのが「NEOかわいい」だ。これまで作り上げてきた「CHAI」の概念や「NEOかわいい」の思想を汚さずに、楽曲を再生すればそれらが美しいまま立ち上がって永遠に一緒に生き続けられるように、ここで活動を止めることを決断した。そういった意味で「NEOかわいいをフォーエバー」と表現したのだと私は感じ取った。


Photo by Yoshio Nakaiso

ラストライブにて最後の挨拶を終えたあと、ステージ上には「NEOかわいいの五訓」が書かれた垂れ幕が開いた。そこにあった五訓は自分自身が探し求めていないと出てこないはずの言葉で、4人が12年間の活動を通して「NEOかわいいの五訓」に辿り着いたことが感慨深かった。10、20代という怒りや反抗心とともに戦った年代(女性としては特に外見的評価に晒される年代でもある)を終えて、これからは「NEOかわいいの五訓」をお守りにし、新たな心の豊かさや癒しを自ら求めながら私たちに伝えてくれるのだろう。ラストライブの前日に出演したラジオ番組『SONAR MUSIC』でマナは「次はみんなを愛すことを一番にしたい」「セルフラブも大事だけど、みんなのことをもっと愛したいと思うようになった」と語り、YouTubeの配信番組でカナは「ここ2、3年、ロックにちょっと飽きてきた。今までリズムを大事にしてきた。リズムに生きてきた。だけどもうリズムじゃないかも、って2、3年前に感じていたんですよ、実は」と語り、これからはヒーリングアーティストを目指すことを伝えている。


Photo by Yoshio Nakaiso

ラストライブの本編最後に演奏したのは「フューチャー」。“There is nothing stopping me!”、“どんな夢をこの先で歌いながら叶えよう? 思ってるよりもずっとわたしの世界は広い”、“Come on my FUTURE!”――その言葉は、オーディエンスの背中を押すだけでなく、4人が自身に言い聞かせるように響き渡っていた(Blu-ray『We The CHAI Tour! FINAL ~NEO KAWAII IS FOREVER~』が発売されたら、涙をこらえながらも一生懸命前に行こうとしている4人の複雑な表情を見返してみてほしい)。4人の心の中では、この先の未来について希望と不安の両方が渦巻いていることだろう。私はCHAIと出会った2016年からの8年間、「生きたいように生きているあなたが最高だよ」というメッセージをもらってきたからこそ、ここで4人に伝え返したい。「CHAIの○○」という肩書きがなくなっても、どんな形であっても、生きたいように生きているあなたが最高だよ。





CHAI
映像商品『We The CHAI Tour! FINAL ~NEO KAWAII IS FOREVER♡~』
2024年7月3日(水)発売予定
完全生産限定盤〈BD + フォトブック〉三方背BOX仕様
商品予約リンク:https://CHAIband.lnk.to/CHAITourFinalBD

CHAI「CHAI JAPAN TOUR 2024『We The CHAI Tour!』」2024年3月12日 EX THEATER ROPPONGI
01. MATCHA
02. IN PINK(feat. Mndsgn)
03. ラブじゃん
04. アイム・ミー
05. 物販紹介ソング
06. Sound & Stomach
07. ボーイズ・セコ・メン
08. We The Female!
09. PING PONG!(feat. YMCK)
10. ACTION
11. PARA PARA
12. まるごと
13. NEO KAWAII, K?
14. クールクールビジョン
15. ハイハイあかちゃん
16. END
17. N.E.O.
18. Donuts Mind If I Do
19. フューチャー
<アンコール>
20. ほれちゃった
21. sayonara complex
<ダブルアンコール>
22. ぎゃらんぶー
23. N.E.O.
セトリプレイリスト:https://CHAIband.lnk.to/WTCTFINALsetlist

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE