アリアナ・グランデ、「運命の人」について思索するアルバム『eternal sunshine』徹底解説

ラスト4曲はキャリア史上もっともパワフルな楽曲

8曲目の「the boy is mine」は、1990年代後半から2000年代初頭のR&Bポップスを想起させる楽曲だ。歌詞に関しては、恋人のイーサン・スレーターとの関係と交際にいたるまでのタイムラインをめぐってネットが大騒ぎになることは避けられそうにない(訳注:グランデの恋人であるイーサン・スレーターは、2023年7月にグランデとの交際が発覚した直後に妻に離婚を申請、現在も離婚調停中)。同曲はR&Bシンガーのモニカ&ブランディによる同名の大ヒットコラボ曲のグランデ版とも言うべき作品で、ダイナミックで重厚なベースが印象的なビートは、『thank you, next』の収録曲「break up with your girlfriend, i’m bored」(イン・シンクのサンプリングが使用されている)の続編のような印象を与える。



ラスト4曲は、グランデのキャリア史上もっともパワフルな楽曲である。10曲目の「we can’t be friends (wait for your love)」は、正真正銘のポップ・アンセムだ。ここでグランデは、スウェーデン出身のシンガー、ロビンを思わせるダンスビートに重ねて、親密で赤裸々なボーカルを披露している。それはまるで、グランデの最初(そして長年)のコラボレーターであるプロデューサーのマックス・マーティンの作品と、マーティンがこれまでにタッグを組んだポップス界の偉大な歌姫たちに捧げられたラブレターのようだ。



対する11曲目の「i wish i hated you」は、落ち着いた雰囲気の楽曲である。ここでグランデは、別れた後も恋人を忘れられない自分を大人の目線で見つめている。ミュージカルの作曲家・作詞家で劇作家でもあるジェイソン・ロバート・ブラウンとは「Dangerous Woman」以来一緒に仕事をしていないが、男女の出会いと別れを描いたブラウンのミュージカル『The Last 5 Years』から多大なる影響を受けていることがわかる。



アルバムが終わりに近づくにつれ、グランデはアルバムの最初で提起した問いの答えに誰よりも近づく。だが、すべての人がそうであるように、恋愛の仕組みを理解しようとするなんてまったく無駄なこと、という結論に至る。ラストの「ordinary things(feat. Nonna)」は、「ノンナ」と慕う祖母の力を借りてグランデが出した答えである。ここでグランデは、愛する人と一緒にいることの純粋な喜びを讃えるのだ。この曲は、どれだけ派手に喧嘩をした後でも「おやすみのキスをせずに寝てしまってはいけない……おやすみのキスをためらってしまうなら、その人は運命の人ではない。だから別れてしまいなさい」というノンナの言葉で幕を下ろす。人生の大きな問題に対する最高の答えだ。



from Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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