三浦大知がアルバム『OVER』の核にあるものを語る この時代に問いかけたかった想い

歌詞へのこだわり

ーありがとうございます。それでは、今回のインタビューはRSJではアルバムの1・5・6・7曲目について掘り下げさせていただくことになります。まずは冒頭の「Pixelated World」から伺いたいのですが、この曲に限らず、歌詞の意味って訊いてもよろしいでしょうか。

はい。歌詞の意味に関しては、Naoさんとの楽曲ではいつもそうなんですけど、僕もNaoさんにはあまり深く訊かないんですよ。いまのNaoさんが思っている世の中のことだったり、三浦大知がいま歌うべきことみたいなことなどについて、Naoさんがその世界を作ってくださる感じなので。その世界の中に自分が入って、この歌詞はこういうことなのではないだろうか、ということをキャッチしながらレコーディングするという。その上で、この曲について大枠を言うと、いまの時代とかこの星全体が持っている靄(もや)、苦しさや不安みたいなことをみんなが共有している。それで、どこか角から崩れていくような、ピクセル化していく感覚に侵食されていくみたいな気分になるんですけど、自分の魂だけは決して崩れない。そういう覚悟や決意を歌った曲なのかなと思います。



ーこの曲を1曲目に置いたのも、まさにそういう決意の表明ということでしょうか。

そうですね。いまの時代の中で生まれた曲だし、『OVER』というアルバムで一番最初に聴いてもらいたい曲を考えるなら、やっぱりこれしかないだろうと思いました。

ー5曲目の「Flavor」ですが、U-Key zoneさんと共作されるのはだいぶ久しぶりですね。今回ご一緒することになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

U-Keyさんとはずっと話はしていたんですよね。全然連絡を取っていなかったわけではなくて、たまにデモを送ってくださったこともあって。そうしたなかで、U-Keyさんの今の流れと、自分の流れが合致したというか。U-Keyさん的にも、今回のトラックはokaerioさんという別の方が作っていて。トラックメイカーとトラックメイカーが同じところに混ざることってそう多くはないんですけど、U-Keyさんもここ最近のチャレンジとして、自分が作らない音像にトップライナー(※歌メロを書く役割)として自分のメロディを乗せてみたらどうなるんだろう、ということを試みられていた時期だったんです。この曲に関しては、そこに三浦大知も混ぜてもらったという感じでしたね。



ー6曲目の「Light Speed」では、以前「Le Penseur」に参加されていたWill Jayさんが作詞と作曲を担当されています。4曲目の「好きなだけ」もそうですね。今回はどのようなきっかけでご一緒されたのでしょうか。

海外の方が作ったデモを聴かせていただく機会がよくあるんですね。三浦大知に対して作ってみよう、誰々に対して作ってみよう、というようなライティング・キャンプみたいなのがあるんですよ。そのときは一旦クレジットを伏せた状態で聴くんですけど、この曲いいなと思って選ぶのがだいたいWill Jayの曲なんです。Will Jayのトップラインとかコード感、ビートメイキングみたいなものが自分に刺さるんだと思うんですよ。好きな感じが多くて。ご本人にお会いしたことはないんですけどね。それで、今回もいろんな方からデモをいただいて選んでみたら、選んだ2曲がどっちもWill Jayじゃんって(笑)。というわけで、がっつり一緒に作らせていただくことになりました。



ー「Light Speed」の歌詞は、日本語のところが三浦さんの担当でしょうか。

そうですね。英語のところがWill Jayの担当です。日本語のところは最初から入る予定だったわけではなくて、デモの段階では2番のサビのところで終わっていたんですね。そこから、大サビがあって最後にサビがあって、という展開をWill Jayが新たに作ってくれたので、その大サビに一行うまくはまるような日本語を入れて、楽曲のテーマや世界が少し膨らむようにしました。

ー他の曲にも言えることですが、今回のアルバムは歌詞も本当に素晴らしいですね。快適に聞き流せてしまうんだけど、譜割りやアクセントの位置は複雑。韻の踏み方が巧みなこともあわせ、とても音楽的な歌詞になっていると感じます。「Light Speed」の日本語のところも、一行だけなんだけどすごく印象的で。

ありがとうございます。嬉しいです。自分の最近の曲だと、恋愛的な歌詞というのはあまりなくて、自己との闘いや向き合い方みたいなのが多いんですよね。この曲に関しては、他の人に書いていただいたからこそ、とある人との一瞬の出会いを忘れられないみたいなのをやることができて。「Light Speed」というテーマはデモの段階からあったので、強い光を見たときに網膜に焼き付くようなイメージを、相手に芽生えた忘れられない感情みたいなことと絡めて書きました。英語の歌詞については、デモの段階からこの状態で出来ていましたね。比喩の仕方とかすごく素敵な表現だったので、変えずにこのまま歌ってみたいと思いました。


Photo by Kentaro Kambe

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