Novel Core武道館公演を総括 「何者でもない自分」が「誰かを救うヒーロー」になるまで

Novel Coreが提示し続ける「新たな正解」

そこからピアノの伴奏に乗せて母親への手紙を歌い上げ「EVE」へとつなげて、これまでたくさんの心配も迷惑もかけた母親への愛と感謝を届けた。そうして自身が幸せになることができた姿をSKY-HIと家族に見せてから、最後のパートへ。

最後は、武道館に立っていたSKY-HIが自分のヒーローであったように、次は自分が誰かのヒーローになるという意志が表現された。「THANKS, ALL MY TEARS」「ジェンガ」には、アーティストを目指す次世代の人たちが映像で合唱に参加(本来はこのステージに上がってもらうことをNovel Coreは思い描いていたが、武道館の厳格なルールなどによってそれは叶えられず、映像での参加となった)。この日合唱で参加した人にとって、この経験が夢に向かい続けるための希望となり、数年後、武道館のステージに立っていたら――そんなことが実現したら、どれだけ素晴らしいだろうか。



ラストの29曲目が歌われる前、Novel Coreはマイクを両手で握りしめて涙を流しながら力強く言葉を紡いだ。それは、この世に味方はいないと思っている人、自分が死んでも世界は変わらず回り続けると思い込んでいる人、ヒーローを探している人に向けたものでありながら、あの頃の自分に語りかけているようでもあった。

「俺がこれだけはどうしても伝えたいってことだけ伝えさせてもらっていい? しんどくなったら人を頼ってください。1人で生きていこうとしないでください。大丈夫だよ。俺は1人でいけるよ。仲間なんかいなくたっていいよ。孤独だって、一匹狼でもいいよ。そうやってひねくれないでください。どんなときでも絶対に理解しようとしてくれてる人はいます。探してください。どんなに悔しいことがあっても、どんなに辛いことがあっても、こいつだったら信じてもいいかなって思える人の存在を探し続けてください。もしも自分の周りにはそんな人いないよって思うんだったら、俺がその1人目になります。俺たちがいくらでも味方します。だから、1人で生きていこうとしないでください」


Photo by Satoshi Hata


Photo by Satoshi Hata

最後に、この日の公演のタイトルが『ONEMAN LIVE -I AM THE HERO- at BUDOKAN』であったことが告げられた。武道館の入り口に掲げられた看板も、終演後にはそのタイトル通りに変更されていた。さらに、翌日にニューアルバム『HERO』がサプライズリリースされた。Novel Coreはこの舞台を踏んで、正真正銘、「ヒーローに憧れていた自分」から「誰かを救うヒーロー」になったのだ。その「誰か」には自分自身も含まれる。派手に転んだ過去を終わりではなく物語の序章にして、幸せなシーンまで走り抜けてきた自分自身。最後に歌われたのは、ニューアルバムのタイトル曲でもある「HERO」。この曲の冒頭では、“本当のことは僕しか知らない”と歌われる。私がここに長々と書いたNovel Coreのストーリーも、彼が表に出したものでしかないし、それを私が解釈して文字にしたものでしかない。彼の本当のストーリーも、心の底にある複雑な感情も、彼自身しか知らない。ただ、そんな中でも私の目線から確かに言えることがひとつだけある。それは、Novel Coreはこの先、ポップシーンにおいて「新たな正解」を生み出しながらさらなる大勢を認めさせるスターへの道を直進していくこと、そしてそのためのセンスや技術だけでなく覚悟と努力ができる才能を十分に鍛え上げてきたということだ。

【関連記事】Novel Coreが語る、期待と後悔を経て手にした「本当の自分」と武道館ライブ、『HERO』の真意

Major 3rd Album
『HERO』
Novel Core
配信中
https://NovelCore.lnk.to/20240118_3rdAL_HERO

LIVE DVD & Blu-ray
『ONEMAN LIVE -I AM THE HERO- at BUDOKAN』
Novel Core
2024年3月27日(水) 発売
https://NovelCore.lnk.to/at_BUDOKAN_LIVEBOX

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