問題児に「苦痛」を与え更生せよ 「地獄のキャンプ」から見る非行更生プログラム 米

更正センターの実効性の低さに加え、プログラムに参加した問題児は別の問題にも直面する。高い虐待率だ。しばしばこうしたキャンプに参加した子どもたちは、訓練を受けていないスタッフから非情な扱いを受けることになる。『地獄の更正キャンプ』でも、ハイキングを拒否した元生徒が、ロープで岩間を引きずられ、数十カ所に擦り傷などを負ったと警察に通報するシーンがある。別の参加者は、カルティサーノ氏がサモアで運営していたPacific Coast Academyで両手足を縛られ、村の酋長から性的暴行を受けたが、職員は聞く耳を持たなかったそうだ。2007年には米国会計検査院が1990~2007年に運営されていたプログラムを調査し、数千件の虐待疑惑があったとの報告書を公表した。2022年にソルトレイク・トリビューン紙が行った調査によれば、2018~2021年の期間中に13人の青少年更正センターの職員が、性行為または性的暴行の疑いで解雇または辞職したという。またローリングストーン誌も2023年、拘束や断食、マインドコントロールといった拷問に近い仕打ちを受けたという生徒の主張をすっぱ抜き、ミズーリ州にあるキリスト教系のアガペ寄宿舎学校を閉鎖に追い込んだ。

場合によっては、施設で受けたトラウマで死に至るケースもある。16歳のクリステン・チェイスさんがハイキング後に心臓発作を起こして死亡したのを受け、遺族は1990年にカルティサーノ氏とChallengerを訴えた。ユタ州の青少年向け牧場Tierra Blancaでは、当時18歳のブルース・シュテーガーさんが走行中のトラックから放り出されて死亡し、複数の指導員が2014年に暴行罪で起訴された――遺族とキャンプの他の職員は、殴打や断食など数週間に及ぶ暴行が原因だと主張している。

2021年には大富豪の令嬢でメディアを賑わすパリス・ヒルトンが議会で証言し、集団更正施設に入所する若者の権利を保護する法案を支持した。10代の時に問題児とみられていたヒルトンは、似たようなキャンプに参加した際に受けた過酷なトラウマを語った。

「ユタ州プロヴォキャニオン・スクールでは、番号札のついたユニフォームを渡されました。もはや私は私ではなくなり、127番という番号でしかありませんでした。太陽の光も新鮮な空気もない屋内に、11カ月連続で閉じ込められました。それでもましな方でした」とヒルトンは証言した。「首を絞められ、顔を平手打ちされ、シャワーの時には男性職員から監視されました。侮蔑的な言葉を浴びせられたり、処方箋もないのに無理やり薬を与えられたり、適切な教育も受けられず、ひっかいた痕や血痕のしみだらけの部屋に監禁されたり。まだ他にもあります」。(同校は現在も稼働しているが、2000年の買収でオーナーが変わった。ローリングストーン誌は学校側にコメントを求めたが、代表者から返答は得られなかった)

ヒルトンをはじめとする人々は、更正キャンプや問題児産業に関する連邦規制の強化を訴え続けている。こうした慣行を禁止する連邦法はいまだ成立していない。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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