WONKがZepp DiverCityで本領発揮、長塚も復帰 愛と真心に溢れた「特別な一夜」

Photo by 木原隆裕

 
昨年、結成10周年を迎えたWONKが1月10日、東京・Zepp DiverCity Tokyoにてワンマンライブを開催した。実は2日前に大阪・GORILLA HALL OSAKAで行われたワンマンライブは、長塚健斗(Vo)が喉に不調をきたし、公演内容を急遽セッションライブに変更する事態となったのだが、この日は長塚も無事に復帰。「アニバーサリーイヤー」の第二章を盛大にスタートした。

【写真ギャラリー】「WONK Live at Zepp DiverCity」(全33点)

WONKにとって初のZepp DiverCityは全席指定の着席スタイル。定刻となり、まずは常田俊太郎(Vn)を筆頭に亀井友莉(Vn)、三品芽生(Vla)、村岡苑子(Vc)のストリングスカルテット、MELRAWこと安藤康平(Sax, Fl)率いる華波(Sax, Cl)、真砂陽地(Tp)、川原聖仁(Tb)のホーンセクション、そして自身のバンドLAGHEADSの活動や米津玄師、藤井 風、Charaなどの作品参加でも知られる小川翔(Gt)がステージに登場。おもむろにチューニングが行われるなか、遅れてメンバーの長塚、荒田洸(Dr)、江﨑文武(Key)、井上幹(Ba)が現れると、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。

ステージ向かって右後方にホーンセクション、左後方にストリングスカルテットが小川を挟む形で横並びとなり、ステージ前方には荒田のドラムセットが右端から、江﨑のエレクトリックピアノが左端から向かい合う形で設置され、その間に長塚と井上が並ぶフォーメーション。サポートメンバー含め、全員が白づくめという衣装はさながらラボ(研究室)の白衣を彷彿とさせる。そう、「日本の音楽を再定義するエクスペリメンタル・ソウルバンド」を標榜するWONKとその仲間たちによる、実験的精神に富んだパフォーマンスが今から繰り広げられるのだ。


Photo by 木原隆裕


Photo by 木原隆裕


常田俊太郎(Photo by 木原隆裕)


華波、MELRAW(Photo by 木原隆裕)

まずは2020年にリリースされたSF仕立ての壮大なコンセプトアルバム『EYES』から、そのタイトル曲でライブをスタート。月明かりのような幻想的なピアノのコードに導かれ、長塚のボーカル、ストリングス、そしてキックと徐々にフレーズが積み重なっていく。一瞬の静寂の後、総勢13人によるアンサンブルが会場いっぱいに鳴り響くと、早くもライブは最初のピークに到達。続く「Anonymous」は、WONKが香取慎吾とコラボし2021年にリリースしたケレン味たっぷりのファンクロック。メジャーとマイナーを行き来しつつ、セクションごとに見える景色をガラリと変えていくアレンジは、ロックオペラとも言える仕上がりだ。


江﨑文武、長塚健斗(Photo by 木原隆裕)


荒田洸(Photo by 木原隆裕)


井上幹(Photo by 木原隆裕)

「どうもこんばんは、WONKです!」と長塚が笑顔で挨拶すると、張り詰めた空気が一気に解き放たれ、大きな歓声・拍手とともにフロアは総立ちに。「みんな、座っててもいいし立ってもいいし、好きに楽しんでくれ」と言って披露したのは、アルバム『EYES』の中でもひときわ軽快なソウルチューン「Rollin'」。弾むようなタイトなビートを荒田が叩き出し、その上を井上のベースがドライブする。シンプルだがツボを押さえた江﨑のコードバッキングに絡みつくような、長塚のベルベットボイスが心のひだに染み渡った。

ミックスエンジニアでもある井上を中心に構築されるWONKのサウンドプロダクションは、「匂い」や「手触り」など聴覚以外の感覚をも刺激するところが魅力の一つでもある。そしてそれは、ライブという場においても全く変わらない。狂おしいほどメロウな「Orange Mug」、荒田によるオートチューンボーカルや管弦楽器のスリリングなアレンジが印象的な「Passione」、レコーディングではキーファー(Kiefer)をゲストに迎えたジャジーな「Fleeting Fantasy」など、どの曲もフレーズの輪郭や、音と音の隙間さえも、手を伸ばせば触れられるような「質感」を感じる。選び抜かれた楽器や機材へのこだわりは当然ながら、それを鳴らし使いこなすメンバーたちの、卓越したテクニックに裏打ちされた豊かな表現力があってこそだと改めて思う。


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