川谷絵音が振り返る2023年の音楽シーン

めまぐるしく循環する邦ロック

―ここまで名前が挙がってない人で、印象的だった国内のアーティストは?

川谷:HoneyWorksの「可愛くてごめん」はいろんなところで聴きましたね。盛り上がったという意味だと、新しい学校のリーダーズとかanoちゃんとか……新しい学校のリーダーズは88risingと一緒にやったり、他とは違うところにいるというか。今は海外に向けて活動することで、日本でも受けるみたいな時代になってきている気もする。どっちかだけじゃないっていうか。



―新しい学校のリーダーズは88risingのフェス「Head In The Clouds」でYOASOBIと共演したりもしてました。

川谷:あとは、WurtSくんとかもっといける気がしますし、シャイトープ「ランデヴー」とかConton Candy「ファジーネーブル」もすごく聴かれてましたよね。やっぱり邦ロックの循環は早いなと思います。5年ぐらいで循環しません? 10年タームとかじゃない気がする。なんなら3年くらいな気もするぐらい。





―Saucy Dogやマカロニえんぴつがブレイクしたのは比較的最近だけど、キャリア的には短くないし、もうその次の世代がどんどん出てきてますよね。

川谷:そうそう、Saucyとかマカロニに影響を受けたバンドがもう出てきているっていう。でも結局、クリープハイプが大きい気がします。クリープハイプのフォロワーみたいな人たちが、ここ5年ぐらいずっと出てきているように思いますね。僕らよりちょい下くらいの世代は、クリープハイプを青春時代に聴いて育ったというか。あとはライブハウスとかでやってるバンドだと、最近はKing Gnuフォロワーもめっちゃ見かけますね。そのなかでただのコピーバンドにならないバンドだけが上がってこれるっていう。一時期はSuchmosフォロワーもめちゃくちゃ多かったけど、Suchmos以上になったバンドは一つもなかったじゃないですか。あとは原口沙輔くんの「人マニア」とか、もともとボカロPじゃないのに、急にボカロでヒット曲を出しているのは面白いですね。

―ダンスやMPCをやってた人がこういう音楽をやるんだっていう。

川谷:僕が最初に会ったときはまだ中学生ぐらいで、たまたまバスのなかで会ったんだよなぁ(笑)。沙輔くんは面白いですね。Furui Rihoちゃんはもともと好きで、流行りそうな感じがすごくあるなって。それとこの前、「Scramble Fes」で離婚伝説のライブを見て、めちゃくちゃ良かったです。やってることはめちゃくちゃ渋いんですよ。超直球だし、やりすぎてるくらいなんですけど、それがいいんですよね。歌もめちゃくちゃ上手いし、ギターも上手いし、バンド全体もかっこよくて。ファッションもパンタロンみたいなの履いていて、サングラスかけて、あそこまでド直球に歌謡曲、シティポップみたいなのをやっている人って最近あんまりいないじゃないですか。全部プロデュースしてやってる感じも見せ方として成功しているというか。最近、GQで2人ともヴィトンなどを着るモデルをやっていましたけど、すでにファッション界隈にも「離婚伝説にヴィトンを着せたら面白い」と思ってる人がいるってことですよね。あれを見たときに売れるなと思いましたね。





―2023年リリースでいうと、どの曲が印象的ですか?

川谷:曲は圧倒的に藤井くんの「花」。歌詞も含めて、めちゃくちゃいい曲だなと思って。ポップスとポップスではないものの間というか、しっかりそこから動かずにやっているというか。どっちにも寄らないけど、どっちかに寄っても藤井くんの場合はかっこいい。いちリスナーとして新譜を聴いて「おお!」ってなるのは、最近だと藤井くんとあと数組くらいしかいないんですよ。「Workin’ Hard」にしても、ポップスの世界にいてああいう曲はなかなか出せないじゃないですか。あの曲がしっかり聴かれるっていうのは素晴らしいと思います。


Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE