WurtSが語る、フィジカル重視の理由、「ライブ」というメディアで表現したいこと

WurtS

コロナ禍にネットから世に出たアーティストは、ライブシーンが再開した2023年に何を思うのか――。2021年、TikTokに投稿したオリジナルソング「分かってないよ」がバイラルし、その後もいくつもの楽曲をヒットさせて、現在ストリーミング再生計4億回を記録する現役大学生アーティスト、WurtS。デビュー当初は「研究者×音楽家」という肩書きでも人々に大きなインパクトを与えた。

もともとWurtSとは、大学におけるマーケティング研究の一環で「TikTokの可能性」「オルタナティブロックのリバイバル論」「縦型MVの分析」など、10〜20代に音楽を届ける実験から始めたプロジェクトである。しかし、WurtSを本格始動させて約3年が経ち、彼自身の意識と表現に変化が生まれている。

若きトップクリエイターとなったWurtSが語る、「リアル」と「ネット」、コロナ禍以降の「フィジカル」「本能」に対する感度は、来たる時代に見失ってはならないことを教えてくれる。

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―前回の取材以降、この1年間の活動や最新EP『BACK』から、WurtSさんの音楽活動への動機や、どういう音楽を作りたいのかが、少しずつ変わってきているんじゃないかと思ったんですね。「研究者×音楽家」という肩書きで世に出てきて、そのフレーズにインパクトがあるからこそ「研究者」というイメージが強いところもあったけど、最近は音楽家としての道筋をまっすぐ深めようとする姿勢を感じたりもして。

WurtS:最初の段階は、どっち付かずだった気もします。音楽を本気でやっているのか、趣味としてやっているのか。「研究者×音楽家」というのは、他の人と違って見えたらいいなという想いもあって言っていたところもありました。今年の活動を振り返ると、フィジカルな部分がすごく出ているなとは思います。全国ライブハウスツアー『WurtS LIVEHOUSE TOUR I』(3〜7月にかけて12カ所15公演を開催)でも言っていたのは、もともとネットから出てきて一方的に音楽を届けていたけれど、ツアーでいろんな人に自分の音楽を楽しんでもらっていることを実感したところから、やっと自分もWurtSというアーティストが存在していることを再認識できたということで。そういったことも、よりフィジカルなアーティストとしてやっていこうという気持ちの変化になりました。「実験としてひとつのアーティストを育てていきたい」というところからWurtSは始まっているので、どこまで行っても客観的に見てる部分もあるんですけど、今はちゃんとWurtSというアーティストを自分が演じている感覚が強い時期だなと思います。

―WurtSさんが今感じる、フィジカルのよさってどんなところですか。

WurtS:その場の気持ちや空気で変わっていくことが、音楽自体が生きている感じがします。音源は一定のクオリティが保たれるんですけれども、それとは違って、コンディションによってクオリティが変わるのも逆によさなのかなって。

―コロナ禍に始めたWurtSは、もともと画面の中でひとりで完結していたものだったけど、特にこの1年は、お客さん然り、コラボしたミュージシャンたち([Alexandros]、Chilli Beans.)然り、ようやく外の人とつながれる期間であった、といった言い方もできますか。

WurtS:まさにですね。フェスにもたくさん出させていただいて、そこで他のアーティストさんと挨拶することもあって仲良くなれたり。ほとんどつながりがない状態だったので、今年はそこの成長が大きいと思います。

―今年の夏フェス出演数ランキング、4位だそうですね。

WurtS:気づいたらそんな(笑)。

スタッフ:去年はツアーも含めて(ライブの本数が)12本だったんですけど、今年は、予定通りいけば60本くらいやります。気づけばうちの会社(UK.PROJECT。銀杏BOYZ、[Alexandros]などが所属するマネジメント/レーベル)で一番ライブをやる人に……。

―とても面白いですね。ネットから出てきたWurtSが、バンドがたくさんいる事務所で一番多くライブをやるアーティストに変換した。「NERVEs」(オリジナルバージョンは2021年12月にリリース)の新しいバージョンを最新EPに入れたのは、ライブを見据えた意識もあってということですよね。

WurtS:そうですね。打ち込み的なよさもあると思うんですけども、ライブでアレンジできるように、できるだけライブで使っている楽器で作りました。



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