原田知世×伊藤ゴロー対談 音楽で結ばれた絆、高橋幸宏への想い、常に変化し続ける姿勢

 
高橋幸宏との思い出を振り返る

─思えば高橋幸宏さんも、YMOの中で特にビートルズが好きな方でした。お二人ともゆかりの深い幸宏さんに関して、今はどんな思い出が脳裏に浮かんできますか?

原田:……まだ、そばにいるような気持ちがしています。実感がないというか。もちろん、もう会えないからこそ「会いたいなあ」とすごく思うし、そのたびに寂しい気持ちになります。幸宏さんは、私が出演しているドラマを見かけると必ず「見たよ」って連絡をくださいました。おそらく、ご自身が関わっている方たちのお仕事の様子とか、離れていてもいつも気にかけてくださっていたのでしょうね。本当に優しい方でした。

生前は、会うたびに「もう一回Pupaをやろうね」とおっしゃってくださっていたんです。私にとって、Pupaは生涯ただ一つのバンド。本当に幸せだと思いながら活動していたし、幸宏さんが出られなかったライブの時は、みんなで集まりその存在の大きさを確認し合いました。私もまた一緒に演奏したかったし、ずっと一緒にそばを歩んでほしかった方です。



伊藤:僕も全然実感がないんです。教授(坂本龍一)の時もそうでしたが、自分にとって特別な人だったのだなと思います。2年ほど前、とあるアーティストのレコーディングに、幸宏さんに誘っていただいて僕も参加させてもらったんです。アレンジしたり、ギターを弾いたり。その時の幸宏さんは、気持ちはすごく元気でも体がなかなかそれに伴わず、すごくもどかしく感じている様子でしたね。幸宏さんにとっては生前最後の仕事は知世ちゃんの昨年出した『fruitful days』の「アップデートされた走馬灯」をビートニクスで作っていただいたものになると思います。

音楽に対しては常に前向きで、会えばいつも「こんなことがやりたい」「あんなことがやりたい」って。若いアーティストの作品も常にチェックされているし、常に好奇心旺盛で。そして自分が手がけた作品も大好きなんですよ(笑)。自分のドラムも好きですし、「そういえば昔、こういう曲をやったんだよね」って、よく聴かせてくれました。

原田:そういう貴重なエピソードを幸宏さんからお聞きするのも楽しくて。本当にいろんなことを覚えていらっしゃるから、いつも周りにたくさんの人が集まっていました。

伊藤:「Here Comes The Sun」はジョージの作詞作曲で、幸宏さんもジョージが大好きじゃないですか。幸宏さんの声を聞くと、ジョージのあの独特の発声を真似ているうちに、幸宏さん独自の歌声が完成されていったのかなとか思ったり。




原田:そういえば、幸宏さんもニール・ヤングの「Only love Can Break Your Heart」をカバーされていましたよね(1991年のソロアルバム『A Day In The Next Life』収録)。私たちの、今回のカバーも聴いてほしかったですね。

今回この曲は私がセレクトしたのですが、10歳離れている兄が高校生の頃によく聴いていたんです。いつも兄の部屋からこの曲をギターで弾き語る声が漏れてきて(笑)。恥ずかしいからか小さい声で歌っていましたが、逆に気になって耳をすませて聴いているうちに私も好きになっていて、いつか歌ってみたいと思っていました。

 
 
 
 

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