竹野内豊が語る、山田孝之との11年ぶりの共演と制作秘話

――竹野内さんは本作で、故郷から離れて都会で活動する写真家の萱島を演じられています。どのような準備をして、撮影に臨まれたのでしょう。

竹野内:撮影前は、石橋組の世界観にどう自分が融合していったらいいのか、本当にできるのかと悶々としていました。作家性の強い脚本ですし、台本に描かれた活字の中だけではなかなか想像がつかないシーンも多くありました。例えば「沼で女に水中に引きずり込まれ気づいたら川岸に倒れていた」であったり、「女の手をつかんだと思ったら木の枝だった」という描写は、読んでいるときは想像の世界で面白くとも、いざ現場で実際に演じてみるとなるとイメージがリアルに浮かばないので、できる限りその場で感じた気持ちを大事にして取り組むようにしていました。


Photo=Mitsuru Nishimura

――共に謎の村に迷い込む宇和島役の山田孝之さんとは『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』以来11年ぶりの共演となります。


竹野内:山田さんとは『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』以来、お会いしていなかったので再び共演できて嬉しかったです。近年では監督業やプロデュース業にも積極的に取り組んでいて、本作でも共同プロデューサーを兼任していて多彩ですよね。

僕が演じた萱島と宇和島は、対照的な人物。本編では細かく描かれていませんが、とあるバックボーンがあって宇和島はあそこまで強欲になってしまったのだと思います。でもその一方で、どこか滑稽さも持ち合わせている。山田さん独自の感性で見事に表現されているからこそ、欲に溺れた人間の傍若無人な姿が、横暴なだけでなく、どこか滑稽で愛おしくも見えてくるところが良かったと思います。


©2023「唄う六人の女」製作委員会

――しかし、先ほど竹野内さんがおっしゃったように想像力をフル回転させないといけない現場だったでしょうね。

竹野内:僕たちはよく「撮・照・録」といいますが、活字だけだとなかなか世界観がわからないだろうからと石橋監督から撮影部・照明部・録音部に絵コンテを配ったそうなんです。だから彼らはどういう画でつながっていくかをなんとなくわかっていたようなのですが、俳優部は配られなかったので本当に手探りでした(※出演者の演技を制限しないように絵コンテを共有しない場合も多い)。一ヵ所、どうしてもイメージがつかめないシーンだけ絵コンテを見せていただきました。「もっと早く見せてもらえればよかった!」と思いましたね(笑)。


Photo=Mitsuru Nishimura

また石橋監督の作品では音楽も重要な役割を担っています。今回も一部に音楽劇のような要素が入っていますし、劇中の音楽がどのようなものになるのかは気になっていました。完成版を拝見する際、楽しみにしていた部分のひとつです。

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