オリヴィア・ロドリゴが語る『バービー』への共感、テイラー・スウィフトとの関係

PHOTOGRAPHY, PROP CONCEPT, AND COLLAGE CREATION BY JOHN YUYI

 

プロモーションのため初来日中のオリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)。世界中から熱い視線を注がれるなか、20歳の歌姫は2ndアルバム『GUTS』を通してまたひとつ大人になった。ローリングストーンUS版最新号のカバーストーリーを完全翻訳でお届けする。こちらは後編。


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オリヴィア・ロドリゴが大いに語る、20歳の現在地と『GUTS』のすべて


『バービー』への共感、テイラー・スウィフトとの関係

その翌日、私たちは「リトル・ドム」という、ロス・フェリズのイタリアンレストランで落ち合った。ロス・フェリズよりも、ブルックリンのキャロル・ガーデンズのほうがしっくりくるような、昔ながらの雰囲気の店だ。ロドリゴは、フリマアプリで買った赤いプレイドのショートワンピースに白い靴下を履き、黒いローファーを合わせている。「昨日は、いっぱいおしゃべりしたね。いろんなことについて考えた」と言った。

その日、ロドリゴはスヌーズ機能に頼らずに目を覚まし、友人で女優のベイリー・マディソンと一緒にビバリーヒルズのピラティススタジオに行っていた。「お気に入りのワークアウト方法なの。そんなに失敗することもないし、自分よりも年上の女性たちがいるピラティススタジオが大好き。いかにもセレブ向けって感じのピラティススタジオで知り合いにばったり会うのは最悪。そう考えただけで不安になる」

円形のブース席に通されると、ロドリゴはダイエットコーラを注文し、私に右側に座るようにと言った(ロドリゴは、生まれつき左耳に難聴を抱えている)。冗談で『素晴らしき哉、人生』(1946年)でジェームズ・スチュワートが演じた人物みたいだと言うと、この映画を見ていないと正直に認め、「自分でもわからないけど、1970年より前の映画が観られない」と言った。「脳がついていかないの。昔のハリウッド俳優って、どうしてあんな発音をするんだろうってずっと不思議だった。オードリー・ヘップバーンやケーリー・グラントの『ダーリン!』の言い方とか。現実世界の人は、あんなふうに言わないよね」

だが、1970年以降の映画は大好きだという。Letterboxdという映画好きのためのアプリのアカウントも持っている。先日、映画を2本観たそうだ。ひとつは父親と行った『オッペンハイマー』。もうひとつは、ニコラス・ケイジ主演の1983年の青春映画『ヴァレー・ガール』。「ニコラス・ケイジの初主演作なんだけど、不思議なくらいセクシーなの」と感想を言った。ケイジが義手のハンサムなパン職人を演じている『月の輝く夜に』(1988年)を勧めると、忘れないようにとスマホにメモし、「私の好きなタイプかも」と言った。


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グレタ・ガーウィグ監督の『バービー』にも感銘を受けたという。実際、数回にわたるインタビュー中も何度かこの映画に触れていた。「『バービー』の悪口を聞くたびにげんなりする。最高のフェミニズム映画なのに。私自身、女性に生まれて本当によかったと思う。女性を性の対象や悲劇のヒロインとして描かずに、ここまで女性にフォーカスした作品は、いままでなかったと思う。バービーというかっこいい女の子が主人公の、前向きでとてもいい作品だと思った」

『バービー』の話題になったので、デュア・リパについて質問すると(デュア・リパは『バービー』にカメオ出演している)、ロドリゴの表情がさらに明るくなった。「次のアルバムが本当に楽しみ。待ち遠しいな」と言い、2021年のグラミー賞での圧巻のパフォーマンスに言及した。『Future Nostalgia』(2020年)の2曲を歌い、ステージ上で早着替えを披露したときだ。「本当にすごかった。うっとりしながらTVを見ていたのを覚えてる。タイトでクリーンな、最高の演出だった。みんなの努力の賜物なんだろうな。私にはとてもじゃないけど無理」

ロドリゴは、ポップスターよりもシンガーソングライターでありたいと願っている。ロドリゴにとっての“アイドル”は誰かと尋ねると、子どものころにロードにインスパイアされたと明かした。「ラジオで『Royals』を聴いたときのことを覚えてる。『どんなものであれ、自分の感情は歌の題材になるんだ』って衝撃を受けた。失恋だけが歌の題材じゃないんだって思った。ロードは、郊外で生きる15歳の自分と喪失感を歌っていた」。ロードの歌は、当時カリフォルニア州にあるテメクラという小さな町で暮らしていた10歳のロドリゴの心に響いたのだった。



もうひとり、忘れてはいけない人物がいる。テイラー・スウィフトだ。ロドリゴとスウィフトの間には、いったい何があったのだろうか。駆け出しの頃、ロドリゴはいち早くスウィフトを「自身にとってのインスピレーション源」と称賛していた。「彼女に対して、いつも尊敬の気持ちでいっぱいです。彼女のすべてに感銘を受けたからこそ、シンガーソングライターとしてのいまの自分があると思っています」と、2021年3月に司会者のライアン・シークレストに語っていたほどだ。同年、ロドリゴとスウィフトは手紙を交わし、スウィフトが『Red』(2012年)制作中に身につけていたのとよく似た指輪がロドリゴにプレゼントされた。2021年5月、ふたりはブリット・アワードで対面を果たした。

だが、その年の夏にはふたりの関係が少し複雑になった。ロドリゴは、『SOUR』の収録曲「1 step forward, 3 steps back」(スウィフトの「New Years Day」の一部がサンプリングされている)のクレジットにスウィフトと共作者ジャック・アントノフの名前を入れ、その後に「déjà vu」が続く(スウィフトの「Cruel Summer」にインスパイアされている曲で、同曲の共作者セイント・ヴィンセントがクレジットに加えられている)。スウィフトが“盗作”だと迫ってクレジットを要求したかどうかは明らかになっていないが、一部のファンはふたりの間に確執があると憶測した。本誌のインタビュー企画でアラニス・モリセットと対談した際の「いじわるな女たち」に関する話題や、ロドリゴとスウィフトが目も合わさなかった2023年のグラミー賞、スウィフトが「Eras」ツアーの南米公演のオープニングアクトにロドリゴの“宿敵”サブリナ・カーペンターを起用したことなど、あらゆることがふたりの関係性を裏打ちしているかのようだった。ロドリゴのファンの中には、「vampire」が実はラブソングではなく、スウィフトとの確執を歌った曲であると思い込んでいる者もいるほどだ。

ミートボールと野菜の入ったスープを飲んでいるロドリゴにスウィフトとの件をぶつけてみると、ロドリゴは一瞬黙り、「私は、誰とももめてない」と静かに言った。「私は至って冷静。何事も自分で解決する。私が話すのは、母親と4人の友人だけ。この話は、もうこれで終わり」と言い、次のように補足した。「SNS上には陰謀論があふれてる。だから私は、宇宙人関連以外の陰謀論は見ないようにしてる」

2021年8月には、これも『SOUR』の収録曲である「good 4 you」のクレジットにパラモアが書き加えられた(訳注:「good 4 you」とパラモアのシングル「Misery Business」の類似性が認められたため)。これについても、ロドリゴは詳しく語らなかった。「あれは予想外だった。当時はすべてが混乱していて、私もまだ駆け出しで何もわからなかった」と言った。パラモアからクレジットを要求されたかどうかは不明だが、「この件にはあまり関わっていない。制作チーム同士の問題だから、私に訊かれても困る」という答えが返ってきただけだった。

アーティストとしての経験を積んだロドリゴなら、どのように“盗作疑惑”に対応するだろうか。若手アーティストにクレジットを求めるのか、それともエルヴィス・コステロのように気にしないのか(ロドリゴの「brutal」がコステロの「Pump It Up」に似ていると、盗作疑惑が持ち上がったことがあった)。「私個人としては、(クレジットを求めるようなことは)しないと思う。でも20〜30年後のことはわからない。私にできるのは、自分で曲を書き、自分でコントロールできることに集中すること」

私たちは、ミートボール入りのパスタとチキンのパルメザンチーズ焼きをシェアする。ロドリゴは、ウェイターが伝票を持ってくる前に2杯目のコーラを注文し「ローリングストーンさん、ごちそうさま!」と言った。

Translated by Shoko Natori

 
 
 
 

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