ジョン・バティステが語るワールドミュージックの再定義、多様な音楽文化をつなぐ秘訣

 

Photo by Samantha Monendo

ブラクストン・クックが語るジョン・バティステ

「この10年で遂げた驚くべき進化」

ブラクストン・クック(Braxton Cook)はオーセンティックもハイブリッドも幅広く対応できるアルトサックス/フルート奏者にして、メロウなサウンドを手がけるプロデューサーであり、ボーカリストでもある。テイラー・スウィフトやマック・ミラーといった大物の作品に参加し、キーファーやマセーゴ、ブルー・ラブ・ビーツともコラボするなど、シーンの様々な場所に顔を出すキーマンは、『World Music Radio』では「My Heart (feat. Rita Payés)」で演奏だけでなく作曲面でもクレジットされている。




―ジョンと知り合った経緯を聞かせてください。

ブラクストン・クック(以下、BC):ジョンと僕はお互いジュリアード音楽院に通っていた。彼は僕が入学する1年前に卒業したんだけど、卒業後もよく学校の周りをぶらぶらしていたんだよ。ドラマーのジョー・セイラー(ジョンのバンド、ステイ・ヒューマンのメンバー)など、ジョンのバンド仲間の多くはまだジュリアード音楽院に通っていたから、ジョンはリハーサルのためによく学校に戻ってきたんだよね。僕は最初にジョー・セイラーと親しくなり、彼の卒業リサイタルに出演することになった。ジョーは、エディ・バーバッシュ(ジョンやコリー・ウォンの作品に起用されているサックス奏者)にアルトを吹いてもらい、ジュリアード音楽院のクラシック音楽科の学生だったチューバのイバンダ・ルフンビカ(ステイ・ヒューマンのメンバー)、その他数人のジュリアード音楽院のミュージシャンをバンドに迎えていた。卒業生のジョンは特別ゲストだったんだよ。その卒業リサイタルはとても楽しかった。ジョンと一緒に演奏するのは初めてだったしね。その後、ジョンは僕をバンドに迎えてくれたんだ。僕はそこでエディ・バーバッシュからホーン・パートとハーモニーを学ぶことができた。2011年から2012年にかけて、僕はジョンとよく一緒に演奏したんだ。地下鉄の列車、路上、そして彼の愛の暴動(Love Riots)などなど、街中のあらゆるタイプの「会場」でね。


ジョン・バティステによる「Love Riots」の様子(2016年)

―あなたが参加した「My Heart」はどんな経緯で作られたんですか?

BC:きっかけは、同じくジュリアード音楽院のジャズ・ミュージシャンで僕のルームメイトだった親友のジャハーン・スウィート(ケンドリック・ラマー、テイラー・スウィフト、ドレイクらを手掛けるプロデューサー/ソングライター)がある晩、ジョンの新しいプロジェクトのセッションに誘ってくれたことだった。そこで僕は、このプロジェクトに携わっているたくさんのプロデューサーやソングライターに会うことができ、彼のアルバムがどのように進行しているのかを聞くことができた。それに数年間会っていなかったジョンと再会できたことも嬉しかったよ。

それから数週間後、ジョンのエグゼクティブ・プロデューサーで私の友人でもあるライアン・リンから、「My Heart」について連絡があった。彼はTextでデモを送ってきて、「(この曲を聴いて)君の頭のなかに聴こえたものをどんどん足してくれない?」と言ってきた。僕はデモを聴いて、すぐに課題を理解したよ。とてもノスタルジックな雰囲気の曲だったから、オールドスクールでドリーミーな雰囲気を加えたくて、バックボーカルのパートとフルートを少し加えたんだ。瑞々しい演奏のフルートやサックスがほしいなと思ったんだよね。




―ジョンからのリクエストはありましたか?

BC:ジョンは特に何もリクエストしてこなかったね。ジャハーン・スウィートとライアン・リンの2人からのリクエストに対し、僕は1時間以内にボーカル、フルート、サックスのパートをたくさん送り返したんだけど、彼らはすぐに気に入ってくれたよ。それからジャハーンは、僕のパートが曲を完璧に引き立てつつ、やりすぎにはならないようなアレンジを施してくれた。彼らはバックパートの完璧なバランスを見つけたと思うよ。

―『World Music Radio』を聴いて感じたことを聞かせてください。

BC:アルバムを聴いて、ジョンのアーティストとしての進化に驚かされたよ。僕とジョンは10年以上の付き合いだ。最初に会ったとき、ジョンはあまり歌わず、ピアノとメロディカが中心だった。だから、彼がこんなに素晴らしいシンガーソングライター・パフォーマーに進化していることに驚いてしまった。また、このアルバムのプロダクションは、前作とは別次元にあるように感じる。ジョンは知的で思慮深く、全世界に受け入れられる音楽を作ることを常に夢見てきたと思うけど、このプロジェクトでそれを達成したと思う。このプロジェクトに参加できたことを光栄に思っているよ。

―あなたはテイラー・スウィフト『Midnights』収録の「Lavender Haze」にもクレジットされていますよね。この曲の話も聞いていいですか?

BC:僕は曲のなかで流れるボーカル・サンプルを歌ってるんだ。始まりは数年前、ジャハーンにボーカルのアイデアとコードを送ったことだった。メジャー・コード進行にのせて“I don't wanna see you in my dreams no more”と歌ったんだ。ジャハーンは素晴らしいプロデューサーで、僕のアイデアを反転させてピッチを上げ、その下に4つ打ちのポップなドラム・グルーヴを載せて送り返してくれた。これはすごいなって思ったよね! でも、それから何年間も音沙汰がなかったから、僕は存在さえ忘れていたんだ。

2022年の9月に突然、ジャハーンから連絡が来た。プロデューサーのSounwaveがジャック・アントノフのためにそのアイデアを演奏し、テイラー・スウィフトがそれに曲をつけたと教えてくれた。僕は「おぉぉぉー!」って思ったよ(笑)。でも、これがどうなるかは実際に見てみないとなって感じでもあった。テイラーのチームは徹底的な秘密主義だから、僕はこの曲が2022年10月21日にリリースされるまで聴いたことがなかったんだよ。でも、あの曲のなかで僕の言葉ははっきり聴こえないんだけど、僕の言葉はそのまま「Lavender Haze」とアルバム『Midnights』全体のコンセプトを物語っていると思う。そこが好きだね。テイラーもそう思ってるかはわからないけど、クールだと思うよ。今ではすべてが運命だったように思う。いずれにせよ、僕はジャハーンに感謝しているし、そのアイデアをプロデュースしてくれたこと、そしてこのような大作に参加させてくれたことに感謝してるんだ。






ジョン・バティステ
『World Music Radio』
発売中
再生・購入:https://jon-batiste.lnk.to/WMR

ジョン・バティステ Premium Showcase in TOKYO(単独公演)
2023年10月6日(金)神田スクエアホール
詳細:https://www.creativeman.co.jp/event/jon_batiste_2023/

Coke STUDIO SUPERPOP JAPAN 2023
2023年10月7日(土)・8日(日)ぴあアリーナ MM
出演:ジョン・バティステ、Mrs. GREEN APPLE、水曜日のカンパネラ、NewJeans、BOYNEXTDOOR(10/7のみ)、xikers(10/8のみ)
詳細:https://superpopfestival.jp/

Translated by Kyoko Maruyama

 
 
 
 

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