ジョン・バティステが語るワールドミュージックの再定義、多様な音楽文化をつなぐ秘訣

 

Photo by Patrick OBrien Smith

カッサ・オーバーオールが語るジョン・バティステ

「オープンマインドなアバンギャルド主義者」

エレクトロニックミュージックの名門Warpから『ANIMALS』を今年リリースし、ジャズシーンに旋風を巻き起こしたドラマー/プロデューサー/ラッパーのカッサ・オーバーオール(Kassa Overall)。10月19日(木)東京・WWW X、10月20日(金)大阪・Billboard Live Osakaで開催されるジャパンツアーは必見だろう。『World Music Radio』では「BOOM FOR REAL」でドラムプログラミングを担当している彼がインタビューに応じてくれた。




―ジョンと知り合った経緯を聞かせてください。

カッサ・オーバーオール(以下、KO):ジョンと僕は同時期にNYのジャズ・シーンに身を投じたんだ。僕は(オハイオ州の)オバーリン音楽院を卒業してからNYに移住し、彼はジュリアード音楽院に進学した。僕らはNYのシーンでは同じ「クラス」にいたんだ。ジャムセッションで一緒になったり、最終的には彼のクルーと一緒にNY中を走り回った。すごく楽しかったのを覚えてるよ。そして最終的には、いろいろな形でコラボレーションをした。ジョンはいつも僕のエレクトロニックな感性に興味を持ってくれていたんだよね。

―ジョンは「BOOM FOR REAL」のコンセプトを、あなたにどう伝えたんですか?

KO:当初、この曲はバスキアのコンセプトに基づいて作られたんだよ。ジャン=ミシェル・バスキアの抽象的な性質を表わす音楽を作るってアイデアだったと思う。そのセッションで僕らはいろんなことに取り組んだ。完成した曲からはさまざまな断片的な要素がすべて集まって、バラバラなハーモニーを生み出しているのが聴き取れるはずだよ。

―「BOOM FOR REAL」はどんなプロセスで作ったんですか?

KO:ジョンとの仕事は常に実験から生まれるんだ。彼はとてもオープンで特定のものに固執しない。だから僕はスタジオで、ちょっとしたアイデアを伝えたり、より良くするために追加できることがあれば提案していた。そんなとき、彼の反応はいつも「いいね!」って感じなんだ。ジョンはオープンマインドなキャット(ジャズ・ミュージシャン)だから。その(自由で自発的な)「プロセス」を本当に信じているんだよ。



―ジョンからあなたに対してリクエストはありましたか?

KO:覚えてないなぁ。とにかく自由だったから、その瞬間瞬間に何かを見つけようとしていた感覚だけは覚えている。ただ、エレクトロニック・ドラムの制作が僕らのスタジオでの探求の大きな部分を占めていたことは確かだね。そのサウンドを、他のすべての出来事の文脈にどう適合させるかってことかな。

―『World Music Radio』を聴いて感じたことを聞かせてください。

KO:ジョンはすべてのアルバムでステートメントを発信していると思う。僕にとって、ジョンはアバンギャルド主義者であり、ポップな感覚の中で実験的なことをしていても、外部の思想家ならどうするかってことをいつも示しているんだ。彼は曲の構造を追求しているから、ポピュラーなサウンドや美学を利用してはいるけど、よく聴くとそのなかに常にユニークなものを入れていることがわかると思う。ジョンを知っていて、同時にセロニアス・モンクをはじめとした長老たちの音楽も知っている人なら、ジョンの音楽からユニークさが滲み出てくるのがわかるはずだよ。だから、ジョンの音楽は僕のようなリスナーにとっては、非常に満足のいく体験なんだ。

Translated by Kyoko Maruyama

 
 
 
 

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