家族にとって「聖域」であるはずの家が、コロナ禍で「地獄」となってしまう。そんな事件をいくつも見聞きしているうちに、「家族とは何か?」「家とは何か?」を今こそ捉え直す必要を感じたという。
「いくつまでに家庭を持ち、いくつで子供をもうけて……みたいな、誰しもが多かれ少なかれ『理想の家庭像』というものに囚われていると思ったんです。でも、それって誰にとっての理想なのか。そこを明確にしないと、理想と現実の埋まらないギャップみたいなものに、多くの人が悩み続けるのではないか? と。僕たちは、コロナ禍で『理想』という言葉の怖さを痛感した。その経験を経て、もしかしたらこの作品を映画として形にすることには、何かしら大きな意味があるのではないかと。そう思い、監督を引き受けることにしたんです」
Photo = Mitsuru Nishimura「安息」の場所でありながら、「不安」や「恐怖」が内在してしまう「家」。毎日暮らしている場所であるにもかかわらず、屋根裏や軒下など実は普段目にしていない場所がいくつもあり、我々はそこに何かしらの気配を感じ取っているのではないだろうか。
「確かにそうですね。特にジャパニーズホラーを見ていると、日本家屋が一つの生き物のように描かれている作品が多い。比較的海外のホラー映画はアトラクション的というか、エンタメ性が高いのに対して「尾を引く」といますか。見終わった後、トイレに行くのも怖くなるし、部屋を暗くしたくないみたいな(笑)。それって、家の持つ歴史みたいなものと関わってくる気がしたんです」