「ロックというクソがDNAに組み込まれている」イヴ・トゥモアのむき出しで挑発的な返答

イヴ・トゥモア(Photo by Masato Yokoyama)

イヴ・トゥモア(Yves Tumor)は、エキセントリックな音楽性と魅惑的な世界観を世に問うておきながらも、実のところこの5年間で3本しかインタビューを受けていない。その全てが対談であり、米メディア『FLAUNT』でミシェル・ラミーと、同じく米メディア『INTERVIEW』でコートニー・ラヴと、そして英メディア『AnOther』でケンブラ・ファーラーと行なったものである。

多くを語ろうとしないミュージシャンであるがゆえに、最新アルバムを携えてフジロックに出演したからといって、近年の作品から漂う極めてロックスター的な振る舞いについてその真意を訊くことなんてできないと思っていた。しかし、打診してみたところ、インタビューを受けるとのことだ。――本当に?

まずは撮影をしようと伝えると、フジロック初日・7月28日の正午を過ぎた頃、イヴ・トゥモアはCRYSTAL PALACE TENTに颯爽と現れた。マネージャーなどは帯同しておらず、単独での登場。そのままカメラの前でノリ良くポージングしてくれたものの、インタビューは土壇場でキャンセルになってしまい、後日メールでの回答という形になった。やはり一筋縄ではいかないが、近年の変化し続ける姿を見ているとそれも想定の範囲内かもしれない。一人でロック史を振り返るような大胆かつ物珍しい試みを披露してきた人物だし、先のミシェル・ラミーとの対談ではこうも発言しているから。

「イメージの面で何かを予見したり、計画したりしたことはないんだ。俺はいつも自分自身であり、とても有機的にやってきた。おそらく、50歳くらいになったら本名(ショーン・ボウイ)を使い始めると思う」。

グラムでキャンプなパフォーマンスでフジロックのステージを沸かせてから待つこと1カ月、ついにメールが返ってきた。ぶっきらぼうながらも、自然体なコメントが並ぶ。実にイヴ・トゥモアらしく、挑発的な態度でもある。そう、それは最新作『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』のアルバムタイトルから音源の細部に至るまで通底する傾向だ。つまり、挑発的なまでのピュアネス。異形の芸術家のむき出しのコメントを、そのままの形でお届けする。(質問作成:つやちゃん・小熊俊哉/構成:つやちゃん)

【写真ギャラリー】イヴ・トゥモア フジロック撮り下ろし(全8点)


Photo by Masato Yokoyama


―あなたはこの5年間で3本しかインタビューを受けていないですね。なぜ今このタイミングで、日本でインタビューを受けようと思ったんですか?

イヴ・トゥモア(以下、YT):マネジメントに強要されたから(笑)。

―dangerous、bizarre、romantic、weirdを兼ね備えたロックスターがこの時代に活躍していることに感激しています。ショーン・ボウイはいつ、どのようにしてイヴ・ トゥモアというダークヒーローに覚醒したんですか?

YT:そんなにシリアスな話じゃない(It’s not that serious)。



―グラムロックのようなけばけばしいギラつきは、クィアカルチャーに息づいてきたキャンプの要素を感じます。あなたにとって、クィアカルチャーはやはり大きなインスピレーション源なのでしょうか。

YT:その瞬間に自然に感じられることは何でもする。自分の置かれている環境からインスピレーションを受けている。


Photo by Masato Yokoyama

―あなたは最初、エレクトロニック・ミュージックの世界で知られるようになりました。コートニー・ラヴとの対談で「俺にはコンピューター、Ableton、ヘッドフォンと、それらを使ってできることしかなかった。でも、昔からパワフルなサウンドやボーカルに夢中だった」と語っていましたが、本当は最初からロックンロールをやりたかったんですか? それとも、どこかでキャリアの劇的な転換点があったのでしょうか?

ムムム……それはないな。このクソ(shit)は自分のDNAに組み込まれている。仲間がロックンロールを発明し、開拓したんだ。最初から最後まで。それだけのことだ。

Translated by Asami Kondo

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