続・J-POPの歴史「バンドからソロへ、音楽業界が盛り上がり続けていった1996年と97年」



96年3月発売、華原朋美さんの「I'm proud」。言わずと知れた詞曲はTK、小室哲哉さんですね。いまさら何をというぐらいに、彼の代表曲の1曲でしょうね。彼女の3枚目のシングルで年間チャートは8位。でもカラオケの年間チャート1位なんですよ。この年、最もカラオケで歌われた曲です。

97年は安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」が年間チャート1位なんですけど、この番組では5月にもあの曲はおかけしなかったですね。安室さんの「Don't wanna cry」をお送りしたんですけど、「Don't wanna cry」とこの「I'm proud」は小室さんが女性アーティストに書いた曲の双璧だと僕は思ったりしてます。教会音楽とまで言えないんですけども、そういう匂いもありながら歌謡曲で、小室さんの一つの特徴、女性アーティストのキー、ギリギリに迫っていくっていう悲壮感がこの曲よく出てるなと思います。TRFとかglobeのようなダンスミュージックとは違う女性シンガーに書いた小室哲哉の代表曲。次の曲も、この年に発売された女性アーティストの名曲であります。



96年11月発売、今井美樹さんの「PRIDE」。97年の年間チャートの6位ですね。プロデュースと詞曲は布袋寅泰さん。自分の恋をプライドとして歌ってるんですね。華原さんも自分の恋を歌ってるんですけど、「I'm proud」、私は負けないっていう、あまり思うような恋ができない中で自分を励ましてるっていう。これが思春期なのかもしれませんね。今井さんは違いますよ。「あなたへの愛が私のプライド」。ここまで言うか(笑)。「あなたは自由と孤独を教えてくれた」。これ、布袋さんが書いてるんですよ。今井さんにこういうふうに歌ってもらいたかったのか、今井さんはこういうふうに思ってるだろうな、思っててくれてるといいなっていう願望を書いたのか、それとも布袋さん自身が今井さんとのお付き合いの中で自由と孤独を学んだのか。さあ、これはどれが本当なんでしょうね。全部本当に思えるからこれだけヒットしたんでしょうけど、男性が書いた愛の歌の中の傑作。さっきの「I'm proud」とこの「PRIDE」はそういう2曲でしょうね。

布袋さんは、この曲で初めて紅白に出ました。今井美樹さんのバック。BOØWYでも自分のソロでも出たことがないのに、彼女のバックでは出るよっていう、そういう優しい男性なんですね。90年代の後半、女性も背筋が伸びておりました。90年代後半、新しい扉を開けたロックミュージシャンの曲。歌ってるのはロックミュージシャンではないんですが、女性です。PUFFYで「これが私の生きる道」。



ソロのシンガー・ソングライターとプロデュースという関係の中では。奥田民生さんとPUFFYは特筆される関係でしょうね。PUFFYは脱力系のヒロインという、民生さんの分身の術のような存在になりました。バンドとソロ、そしてソングライターこの曲を書いたのもそんな2人でありました。

Rolling Stone Japan 編集部

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