続・J-POPの歴史「一番売れた人たちが一番誠実に音楽を作ってた1998年と99年」

1998年9月6日に永眠した黒澤明 (Photo by Sergio Gaudenti/Sygma via Getty Images)

音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。

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2023年7月の特集は「田家秀樹的 続90年代ノート」。「J-POP LEGEND FORUM」時代に放送した「60年代ノート」「70年代ノート」「80年代ノート」の続編として、今年5月に特集した「田家秀樹的90年代ノート」の続編で、よりパーソナルな内容の90年代特集。PART5は、1998年、1999年のヒット曲10曲をピックアップする。



こんばんは。「J-POP LEGEND CAFE」マスターの田家秀樹です。今流れているのは、B'zの「Brotherhood」。99年7月に発売になったアルバム『Brotherhood』のタイトル曲ですね。改めてB'zの曲を振り返っていて、当時一番好きだなと思った曲。今聴いてもこの曲いいなと思える曲。今日のテーマはこの曲ですね。

98年の年間チャート、ミリオンセラーシングル14作。アルバムが、なんと25作です。シングルのミリオンセラーよりもアルバムのミリオンセラーが多かった。CDの総売り上げが約4億5000万枚もあった。天文学的な数字とはこういうこと言うんでしょうね。その象徴のようなアルバムが、B'zのベストアルバム『B'z The Best "Pleasure"』と『B'z The Best "Treasure"』でありました。両方合わせて1000万。でも残り4億4000万枚あったんですよ。年間チャートの1位、2位もこの2枚でしたね。97年にGLAYが出したベスト『REVIEW -BEST OF GLAY-』を抜いて、ベストアルバムセールス1位になりました。

この「Brotherhood」を見たときに感動したのが、プロモーション映像だったんですよ。ツアーのドキュメント。スタッフが出てたんですね。B'zはツアーバンドなんだ、ライブバンドなんだっていうのを再認識できたことが一番良かったですね。ツアーのロマンが映像になってたんです。僕も90年に浜田省吾さんのツアーON THE ROADに全行程同行して、ツアーのロマンってこういうものかと思ったんですけど、そのきっかけになったのが、ジャーニーのツアードキュメントだったんですよ。そういうバンドの本質を、このB'zの「Brotherhood」のミュージックビデオに見たんですね。もう売れるとか売れるんじゃないんだよっていう、そういうバンドなんだなと思いました。

90年代終わりに頂点に行ってしまった人たちの一つの葛藤。次の人たちもそうだったと思います。97年にアルバム『BOLERO』を出して、そのツアーの東京ドームで活動休止した。この曲で活動再開になりました。98年10月発売、Mr.Childrenで「終わりなき旅」。



98年10月発売、Mr.Children「終わりなき旅」。90年代の主役の1組がMr.Childrenですね。改めて90年代を振り返ったときに、一番売れた人たちが一番誠実に音楽を作ってたんじゃないかなと思ったりもするんです。ミスチルは「innocent world」「Tomorrow never knows」、そういう大ヒットがあって、その後に『深海』『BOLERO』っていうアルバムを出しました。『BOLERO』の中の「ALIVE」っていう曲は、98年3月の東京ドームのメイン曲だったんですね。その中の歌詞が画面に大写しになって、「やがて荒野に 花は咲くだろう あらゆる国境線を越え」っていう歌詞がありました。ミスチルが国境線って言葉を使うようになったんだなと思ったりもしました。

彼らは99年にアルバム『DISCOVERY』を出して、そのときのツアーは映像を最初出さなかったんですね。ライブアルバムだけ。ステージに大掛かりな映像は何もなかった。そのときインタビューしてるんですけど、僕らにはあまり照明を当てないでほしいと言ってたんです。曲と自分たちの関係みたいなことを誰よりも誠実に考えてたバンドがMr.Childrenだったんじゃないかなと思います。

Rolling Stone Japan 編集部

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