琉球古典音楽師範・よなは徹と学ぶ、島唄と沖縄の音楽の歴史

よなは徹

音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。

2023年6月の特集は「沖縄を知ろう」。沖縄戦で亡くなった方たちの霊を追悼する沖縄の慰霊の日である6月23日。その6月に改めて音楽を通して沖縄を知ろう、沖縄について勉強しようという1カ月間。PART3は幼少のときから歌や三線に親しみ、琉球古典音楽の師範として数多くの賞を受賞しているよなは徹を迎え、沖縄の音楽に迫る。

北風(NISHIKAZI) / よなは徹

田家:今週は島唄について勉強します。勉強ですよ。学びのカフェ、勉強カフェですね。沖縄の音楽の歴史は古いですからね。15世紀の昔からあります。450年続いた琉球王朝があった頃からずっとあるんですね。徳川幕府より遥かに長いです。1週目でBEGINの英昭さんが「島唄は僕らがやってはいけない音楽だと思ってた」っていう話がありました。彼らも「島人ぬ宝」にたどり着くまで10年以上経ってるんですね。こうやって簡単に島唄と言ってしまっていいんだろうかと思いながら今週のゲストをお迎えしてます。

さっきから流れてるのは、よなは徹さんの「北風(NISHIKAZI)」という曲です。「北風」と書いて「にしかじ」と読む。よなはさんは沖縄県謝苅の生まれ。幼少のときから歌や三線に親しんで、琉球古典音楽の師範として数多くの賞を受賞されてます。琉球音楽を歌ったシリーズのアルバム、『Roots〜琉楽継承』は4枚、ベストアルバムを入れて10枚のアルバムを発売されてます。三線教室やラジオ番組のパーソナリティ、ご自分ではもちろん作曲もされてる。森山良子さんとかスピッツのアルバムやコンサートにも参加されてます。ジャンルを超えて、今の琉球音楽、島唄を伝えられている第一人者です。こんばんは。

よなは:こんばんは、はいさいちゅ~がなびら、よなは徹です。

田家:今流れてる「北風(NISHIKAZI)」は、よなはさんの登場曲だという。

よなは:そうですね。2002年に沖縄のビール会社のお歳暮のCM曲だったんですよ。CMが流れたときに、今で言うとバズったっていうんですかね。いろいろ問い合わせがありまして、作曲された上地正昭さんっていう方なんですけど、上地さんのところに連絡をして、どうにか1曲として成り立つように作ってほしいという依頼をして、その年、2002年に最初にシングルを出したんですね。その後にまたコラボレーションアルバムの中に録り直して今回、ベストアルバム『とぅなか』の中に入れたっていう。

田家:「北風」と書いて「にしかじ」、こういう読み方なんですね。

よなは:そうですね。北のことを「にし」というんですよね。西のことを「いり」、東のことを「あがり」、太陽が上がって入るのが「いり」。

田家:自然の摂理に沿ってますね。いい言葉ですね。今日は沖縄の島唄について教えていただこうと。どんな音楽でどんな歴史があったとか、どんなことをやってきたのかとか、沖縄の人たちの心や生活にどのくらい深く根付いているのか。よのはさんは琉球古典音楽、野村流音楽協会師範という肩書きがついておりました。

よなは:2010年に師範免許をいただきまして、後輩の育成に力を入れております。

田家:僕らが乱暴に島唄と言ってしまうんですが、島唄と古典とは違うんですね。

よなは:大きくジャンル分けをしますと、琉球古典音楽っていうのは宮廷音楽、いわゆる王朝時代の国王様であったり、冊封使、中国から来た偉い人たち、役人であるとか宮廷音楽ですよね。一方島唄っていうのは、庶民の音楽なんですよ。もちろん明治以降、廃藩置県までも島唄として歌われてた曲もあるんですけど、三線はあまり使われてないんですね。アカペラであったり、農具を叩いてリズムを作って歌われていた。全くなかったわけじゃないです。それが廃藩置県のときに、今まで首里城の中で三線を弾いてた人たちが、いわゆる都落ちをして、そこに三線を入れ始めたのが始まりだと言われてはいます。

田家:なるほどね。今日は、よなはさんに曲を選んでいただいたんで、1曲目を聞いていただこうと思うんですが、「かぎやで風節(カジャデフウブシ)」。

よなは:これは宮廷音楽で、やっぱり国王様の前で歌う歌なんですね。お祝いの席、祝儀曲としても有名で、沖縄の座開きのときは欠かせない1曲となっております。野村流古典音楽保存会の皆さんが演奏されております。

Rolling Stone Japan 編集部

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